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第10話

「りょう、もう、イ、く――」 「由樹がイくとこ、見せて……?」  崎田の陰茎がばちゅんと音を立てながら萩山の奥を押した時、身体を弓なりにしてシーツをぎゅ、とつかんだ彼は喘ぐ余裕すらない快楽に飲み込まれていた。  絶頂の余韻に浸りつつ、はあはあと呼吸を荒げた萩山の目に飛び込んできたのは全く萎えていない崎田の陰茎だった。 「ごめん由樹、もうちょっと我慢してくれるか?」  萩山の身体の奥がきゅんと疼き、頭で言葉を理解する前に小さく頷いていた。  まだ冷めきっていない、柔らかくなった内壁にもう一度崎田の陰茎が挿入されていく。  萩山がそれをぼんやり眺めていると、視線の先の男は照れくさそうに少し口を尖らせた。 「あんまり見るなよ、照れるだろ」 「あのさ、マジで俺で勃ってるんだなーって、改めて思ってさ」 「当たり前だろ。だって……」 「だって?」 「悪い、なんでもない」  萩山が首を傾げてもう一度問いかけると、崎田は視線を逸らし、奥まで深く押し込んできた。 「なあ、気になるだろ……っ、あ……」 「……今はまだ、言えない」 「なんだよ、それ」  むっとして見上げると、額から落ちた汗がぽたりと頬につたった。崎田は目を伏せて唇を噛みしめたまま、ただ腰を強く打ちつけてくる。  その必死さに萩山は結局追及できず、シーツを握りしめるしかなかった。 「……ほんと、ずるいよな」  思わず漏れた言葉は、彼から与えられる快楽によってかき消されていった。  自分のことを気遣いつつも、セーブしきれていない腰の動きのせいで、萩山もまた快楽を感じる。  こんなに気持ちいいのは、俺がΩで崎田がαだからなんだろうな――と萩山が考えたときに、それを見透かされたように唇が降ってきて、そのまま首筋にやってくる。 「あー……バックだったらこれ、本当にヤバかったかも……」 「うっ……ん……?」 「……由樹は、気にしなくていいよ」  どこか寂しそうに見えるその顔に萩山は口を開きかけたが、その中に崎田の舌がぬるりと入り込んできて、これ以上何も言えなかった。  部屋に響く水音が一層激しくなり、尻の下に冷たい感触がするほど粘液が溢れており、気持ちより先に身体が崎田を受け入れている事実に色々な意味で頭がくらくらする。  明日以降の不安もあるが、今はこの時間を味わいたいという気持ちが萩山の中に確かに芽生えており、幼馴染への感情とはまた違うそれが、心の中へ墨のように広がっていくのだった。

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