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第34話

 萩山が背に回した手に、崎田の背筋の硬さが伝わる。女性のそれとは異なる感触を確かめるようにひと撫でする。  手のひらにそっと力をこめると、彼の胸に当たる指先が震えた。  その震えが合図のように、崎田の唇が鎖骨から胸の中央へと滑り降りていく。  萩山の息がひゅ、と音を立てて止まる。  その行き先を悟った瞬間、心臓の音がやけに大きく響いた。触れられる前からそこが熱く、萩山は間違いなく自分の身体がつくり変えられていっているのを感じた。  崎田の唇が、乳首のすぐ傍で止まる。  彼の熱い息がかかるだけで、萩山の身体がぴくりと反応する。そんな自分に気づいて顔がかあっと熱くなった。 「……由樹」  低く名前を呼ばれる。その低さにぞくりとした次の瞬間、 柔らかな舌がそこを掠めた。 「……っ、あ」  逃げ場のない高い声が漏れた。崎田に吸い付かれたところがじんじんと疼く。  彼が何かをするたびに、びくびくと震える自分の身体が恥ずかしくて、視線を逸らす。 「ごめん、嫌だったか」  唇を離して、申し訳なさそうに崎田が囁く。 「……ち、がっ……」  否定の言葉が喉で途切れる。どうしても息が整わない。  その反応を見て、崎田の目がわずかに細くなる。理性の奥で、何かがほどけていくような目だった。  もう一度、彼の唇が胸へと戻る。今度は、はっきりと吸い上げるように音を立てる。 「やっ……さきた、そこ、っ」  思わず肩が浮く。自分でも抑えきれない声が、耳まで熱くさせた。吸われるたび、そこから全身に快感が広がっていく。  柔らかな舌が一度離れて、今度は乳首の縁をなぞる。それすらも快楽として脳が処理している事実に混乱していると、尖りきった中心部を唇の端で甘く噛まれた。  びくん、と身体が跳ねる。  痛みではなく、快感。そんなもの、知らなかったのに。この先も、知るはずがなかったのに。  乳首だけでなく、その周り――乳輪の柔らかい部分にまで唇が触れ、そこにも熱が宿っていく。  擦れるたび、思考が白く滲む。それがどこか情けなくて、萩山は眉間にしわを寄せた。 「……そんな顔しないで、由樹が嫌だったらやめる」  囁きが震えていた。  恥ずかしい。けれど、もう止められない。  息を乱しながら、萩山は小さく首を振った。 「……やめないで」

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