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第35話

 この気持ちがΩとしての本能によるものなのか、萩山由樹としてのものなのか、今の萩山にはわからなかった。  しかし、崎田から与えられる快楽を受け入れないという選択肢は、今の萩山にはなかった。  頭の片隅でそれを認められない自分も確かにいたが、胸の尖りに再び顔を近づける崎田を見て、体の奥がずくりと疼いた。  舐めて吸ってほしいと言わんばかりにぴんと主張している先端を、尖らせた舌でちょんと突かれる。 「っあ……!」  それだけで身体にびりりとした快楽が走り、無意識に腰が浮き下半身を押し付ける形になる。  前は痛いほど張り詰めており、後ろは下着にいくらか染みこんでいる程、Ωの分泌液が溢れている。 「あは、萩山……上も下もガチガチで可愛い」 「や、かわいく……な、あっ……!」  崎田はわざと膝で下半身を刺激しながら萩山の片方の乳首に吸い付いて、もう片方は親指と人差し指でくりくりと捏ねている。  ヒートのせいかその刺激に耐えられなくなった萩山は、大きく身体を震わせると、先走りだけがこぽりとあふれる感覚とともに甘イキした。  はーっ、はーっと肩で呼吸をしているのを整える間もなく、崎田がじゅるじゅると乳首を刺激する。 「さきた、またきちゃう、やだ……」 「そうなってもいいよ。もっと萩山の可愛いところ見せてよ」  指先だけが乳首から離れると、今度はその手がゆっくりと下腹部を撫で下ろしていく。汗で湿った肌を滑る指の跡が、まるで焼き印のように熱を残していった。 「ここも……可愛いな。萩山の全部、俺のこと欲しがってるのかな」 「そんな……こと、ないっ……」  否定の言葉は喉の奥で震え、最後まで言い切る前に、指先が布越しに中心を撫でた。 「……う、あ……っ」  布が擦れるたび、じんと奥にまで響くような快感が広がり、腰が勝手に跳ねる。理性はそれを止めようとするのに、身体はもっと求めてしまう。  彼の手がそのまま下着の中へと潜りこみ、溢れた熱を掬い上げるように指を動かす。ぬめった音が耳に届くたびに、恥ずかしさと心地よさが入り混じって、息が詰まった。 「……だめ、そんなとこ……」 「もう濡れてるのに?」  低く笑う声に、胸の奥がきゅうと締めつけられる。  いやだ、と思う心と、もっと触れてほしいという本能がせめぎ合って、萩山はシーツを掴んで身を震わせた。  崎田の指がぬるりと、ためらうように奥へ沈んでいく。 「……っあ、あ……!」  膝が跳ね、声が裏返る。 「結構すんなり入ったね。萩山の中、あったかい」  その囁きが耳の奥をくすぐり、理性が音を立てて崩れていった。

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