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第36話

 指が奥を探るたびに、そこがわずかに蠢く。  くちゅ、くちゅ、と湿った音が重なり、萩山の喉から掠れた息が漏れた。 「ん……は、あ……っ、そこ、だめ……っ」 「ここが気持ちいいのか?」  問いかけるように指先がゆっくりと蠢き、わずかに角度を変える。そのたびに、腰の奥でじんと熱が弾けた。  萩山は首を横に振るが、指の動きに合わせて腰が逃げられずに揺れてしまう。  理性の残り火が「恥ずかしい」「やめたい」と訴えているのに、身体は正直に震えて応える。  それを知っている崎田が、唇の端を上げて低く囁いた。 「かわいいよ、萩山。こんなになってるの、嬉しい」 「そ、んな……ちが、……あっ」  言葉を遮るように、もう一本の指がゆっくりと押し込まれてくる。 「……ひっ、ふ、う……っ」  自然と涙がにじんだ。けれど痛みよりも、奥にじんじんと響く快感が勝っていく。  絡められた手がきゅっと握られ、唇が耳の裏をかすめた。 「怖くないよ……萩山、ちゃんと感じて」  その言葉が甘くて、優しすぎて、胸の奥がぎゅうっと苦しくなる。  触れられるたびに、少しずつ身体の奥が柔らかく解けていく。  抵抗の形をしていた緊張が、快楽に塗り替えられていく。 「ん……や、だのに……きもち、い……っ」 「うん、いいよ。そのまま感じて。全部、俺に見せて」  首筋をなぞる唇の動きと、奥をくすぐる指の動きが重なって、萩山の身体が跳ねる。  息を吸うたびに甘い匂いが濃くなって、空気そのものが熱を帯びていくようだった。  指が動くたび、奥がきゅうっと締まる。  そのたびに、萩山は自分の意思とは無関係に腰を揺らしていた。  指を抜かれるたびに、下着の中で熱くなった空気が触れてひくりと疼く。  物足りなさに、喉の奥が勝手に鳴った。 「……さきた、もっと……」  自分の口からそんな甘ったるい声が出たことに、一瞬、萩山の瞳が揺れる。  けれど崎田は何も言わず、ただ優しく唇を重ねて、濡れた瞼の上にキスを落とした。 「いいよ。欲しいだけ、言って」 「……や、でも……」 「欲しいんだろ?」  囁かれた声が低く、熱を孕んで耳に落ちる。  その瞬間、萩山の身体がぞくりと震えた。 「……もっと、して……」  か細い声だった。けれどその響きに、崎田の喉が小さく鳴る。 「……下、脱がせるぞ」  ちゅぽん、と指を引き抜いたあと、抵抗しない萩山のズボンと下着を一気に脱がせる。  Ωの分泌液がとろりと糸を引いたのを見て、崎田は目を細めた。  濡れた指がもう一度、ゆっくりと奥を探っていく。先ほどよりも深く、確かめるように。  崎田の腰が自然と迎えに行くように揺れ、自分の意思ではないのに、どんどん欲があふれてくる。 「や、なんか、すご、きもち……っ」  萩山の声が掠れ、背筋が弓なりに反る。崎田の指が触れるたび、甘い音がこぽこぽと零れた。  彼の肩に手を伸ばすと、爪が軽く食い込む。 「萩山……かわいい……その顔、すごい好き」 「そ、な、言わないで……」  言葉とは裏腹に、萩山の腰は逃げずに動いていた。  崎田に触れられたい。  もっと。もっと奥まで――

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