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第61話

 次に目を覚ますと、窓から差し込む光が随分赤みを帯びて柔らかくなっていることに気づく。  視線だけ動かすと、寝室の椅子に腰掛けてノートパソコンで何やら作業をしている崎田が視界に入った。  家で仕事してるって、本当なんだ。邪魔しないようにしないと……と思った萩山は狸寝入りをしようとしたが、それより先に崎田が立ち上がった。 「由樹、調子はどう?」 「おかげさまで、だいぶ良くなったよ」  萩山が言うと崎田は柔らかく微笑んで、萩山の方へと近づき頭を撫でる。  萩山は甘ったるい空気にうっとりしそうになりながらも、気になったことを口にした。 「仕事、邪魔しちゃったか?」 「ん?いや。WEBデザインの方の仕事だから別にいいよ」 「いくつか掛け持ちしてるのか?」 「あ、まあ……な」  少し歯切れの悪い返事に違和感を覚えたが、多分似たような仕事だろうと勝手に解釈した萩山は、考えるより先に次の言葉が出た。 「そういえば、最近俺変な夢見るんだ」 「変な夢……?」 「うん。子供の頃の俺と遼が、番ごっこって言って俺のうなじ噛むやつ」 「っ……」  てっきり笑われるかと思いきや、予想外に目を丸くした崎田を見て萩山は面食らう。 「覚えてたのか……?」 「え……いや、だから、夢……」 「違う」  かぶりを振った崎田は、視線を左右にきょろきょろと動かしてから、意を決したように口を開く。 「昔、俺がαで由樹がΩだってわかる前に、噛んだんだ」 「えっ……」 「由樹のその体質も、俺のせいかもしれない」 「は、なんで、俺の体質……」 「……ごめん、まだ……言えない」  色々な事実が一気に襲ってきて、まだ万全ではない萩山の脳みそはキャパオーバーを迎える。  ぐらりと目眩がして手を額にやると、崎田が心配そうに覗き込んできた。 「……遼、俺のこの身体のこと知ってて、遊んでたの」 「違う、俺はほんとに由樹のことがずっと好きで」 「そっか……ごめん。今日は帰ってもいいかな」 「……その状態じゃ一人で帰せないから俺が送る」  妙な迫力で、いいな?と念押しされた萩山は、頷くことしかできずに崎田に手を引かれる。  肩を支えられながらアパートを出て、崎田の車に乗り込むと、まだ少し目眩がした。

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