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幸せな海※

【R18】 ―― 夜、いつの間にか眠っていた俺は目を覚まし、布団の中からばっと体を起こした。 いま、何時だ…? ベッド横に置かれた置時計を見ると、時計の針が夜8時頃を差している。 (もうこんな時間……!) ベッドから起き上がろうとする体を、後ろから伸びてきた手に抱き寄せられる。 「か、片桐くん」 彼の力強い腕の感触に、勝手に頬が染まり、胸がどきどきする。 「やることやったらすぐ帰るってことですか?」 後ろから耳傍で囁かれる彼の低い声に、ぞくり、全身が粟立つ。 「そうじゃないよ」 俺だって、片桐君とずっと一緒にいたい。明日が、仕事じゃなければ……。 「まだ8時じゃないですか」 「もう8時だよ、夕飯食べたり、お風呂入ったりしないと」 それに、俺はまだまだ仕事に不慣れな新入社員だし…。 「星七さん」 背後から俺を抱き寄せながら、片桐君が口を開く。 「一緒に住みませんか?ここに」 えっ。 「俺たち両想いだし、恋人同士だし…部屋だって広いし。普通一緒に住むんじゃないですか?」 片桐君が、俺の体にまわす腕の力を少し強くしながら言う。 片桐君と、一緒に住む……? それってつまり、同棲っっ!? 「い、いやぁ、気が早いんじゃないかなぁ」 片桐君の腕の中であははとぎこちなく笑う。 すると、体の向きを片桐君の方に向かせられた。 「断る理由って何ですか」 「…えっ」 片桐君の太い眉毛の下にある、鋭い目つきに捉えられる。 「もしかして、他に気になる男がいるとか?」 ―ドキ 目を細めた片桐君に見つめられて、心臓が甘く疼く。 「そっそうじゃないよ!」 片桐君以上に素敵な人なんていない! っていうか、気になる男云々の前に、そもそも俺、男なんだけど…。 「じゃあ何」 片桐君の瞳に捕まえられ、俺は片桐君の腕の中から逃げられないまま、頬をほんの少しだけ赤くして目を逸らす。 「……だって。俺がここに住んだら、片桐君に支障が出るかなって」 「支障?」 「俺、ただの会社員だし、普通の、一般ピープルだし……。俺がそばにいたら、片桐君に迷惑がかかるんじゃ…と思って」 そこまで言ったとき、ぎゅうと体を、片桐君に抱きしめられた。 俺は片桐君の胸の中で目を開きながら、どきどきと落ち着きなく心臓を速く打たせる。 頭上で、はあ、と息を吐く片桐君。 「もう…また突きたくなってきた」 片桐君の手が下へと潜り込み、俺のお尻を掴んで触る。 「寧ろ、星七さんがここに住まないほうが、俺に支障が出る」 支障…? 「俺に迷惑かけたくないんだったら、一緒に住んで」 言いながら、片桐君が俺の頭にキスを落とし、ナカに指を入れてくる。 「あっ…片桐君…」 片桐君の指に反応して、アソコがまた立ち上がってくる。 「やっぱりもう1回挿れたい」 ――えっ!? 赤面しながら驚く俺の体を片桐君がまたベッドに押し倒し、ローションを垂らす。 俺の両足を掴んで持ち上げ、ナカに大きなモノを挿れてくる。 俺は今日何度目か分からない行為に、体をビクン!と大きく震わせて、仰け反らせる。 はあはあと熱い息を漏らしながら、上にある片桐君の顔を見つめる。 「星七さんえろいなぁ」 意地悪げな表情で俺を見下ろす片桐君が、砕けた口調でそう言い、俺の硬く立つアソコを手で握る。 「星七さん」 片桐君が俺の耳傍まで顔を近づけ、声を落とす。 「もう絶対、俺以外のやつにどこも触らせないで」 低くて甘い優しい声と、ナカにある彼の熱いモノの感触だけで、気を抜くとすぐイキそうになる。 「俺だけ……。 ここも、ここも、全部、 ―――俺のもの」 片桐君に、体も心も染め上げられる。 片桐君が動いて、声を上げさせられる。 片桐君の、広くて大きな甘い海に、身をちゃぷちゃぷと揺らされているような気分。 ……幸せな海。 幸せな波の感触。 片桐君の筋肉質で頑丈な背中に、手をまわして涙する。 彼が愛しくて、俺は涙が止まらなかった。

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