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お風呂※
【R18】
――
―『――片桐… お前は幸せになれない』
ダウンライトの柔らかな光に照らされた浴室。
広すぎる白い湯船にひとり、膝を立てて浸かっていると、頭に今日会った茶髪の彼の言葉が蘇った。
(なんか失礼な人だったな……。片桐君に対してもだし、俺に対しても)
それにしても、彼って片桐君とはどういう関係なんだろう。
……いや。
考えなくても、見た目と雰囲気で何となく分かってはいるけれど…。
そこまで思考を巡らせていたとき、突然浴室のガラス張りの扉が開く音が聞こえて、体がビクッ!と跳ねた。
湯船に浸かったまま振り向くと、大理石調の黒色の壁を背に立つ、全裸の片桐君がいた。
「一緒に入ってもいいですか?」
慌てて片桐君から目を逸らすと、俺は頭を縦に何度も頷かせる。
少しして、軽くシャワーを浴びた片桐君が、白く濁った湯船の中へ入ってくる。
俺は窓の向こうに広がる夜景に目を移したまま、体を硬直させる。
(か…片桐君と、お風呂だなんて……っ)
「星七さん」
ビクッ
「何で目合わせてくれないんですか」
なんで……?
何でってそれは、…恥ずかしいからですけど…!?
「お……おれ、もうそろそろ出ようかな…」
依然として彼の方を直視できないまま、体を起こそうとすると。
グイッと手首を掴まれて、「わっ!」と言いながら俺は彼の裸の胸に体をもたれかける。
硬く引き締まった、彼の胸の感触に直に触れて、一気に顔が赤く染まった。
「星七さん、大丈夫?」
片桐君の足の間に体を入れてもたれかかりながら、またその声にすら、ビクリとする。
「だ、だいじょうぶ……」
消え入るような声で言って、添えていた彼の胸から手を離す。
彼に背を向けた瞬間、後ろからぎゅっと抱き締められた。
片桐君の手が下に伸び、俺のをゆっくり優しく触りながら、後ろから首筋に舌を這わせられる。
「…あっ… ちょっと片桐君… お風呂では…」
ぷるぷると足を震わせながら、甘い吐息と共に懸命に抵抗の言葉を吐き出す。
「星七さん耳真っ赤」
顔を俯かせていると、耳にふーと息を吹きかけられ、体が敏感に反応して揺れる。
片桐君にかぷり、耳に柔く噛み付かれた。
「ぁあ…っ」
「星七さん耳弱い?かわいい」
逃げようとする体を捕まえられるように、お腹の辺りに腕を回されている。
湯船の中、片桐君の長い指が乳首を弄び、同時にアソコまで責められ、俺は甘い声を浴室に響かせる。
「こっち向いて」
言われるまま、のぼせた熱で赤い顔を後ろに振り向くと、片桐君に唇全体を覆うように口を塞がれる。
舌を絡めたキスに、何も考えられなくなっていく。
「壁に手ついて」
湯船から上がると、片桐君にそう言われ、俺は浴室のタイル張りの黒い壁に両手をつく。
後ろに、しばらく彼の指が出入りするのを感じたあと、
「力抜いて」
片桐君のだろう硬いモノが当てられて、体が勝手に震える。
ま、まさか…ここでヤるっていうのっ…!?
「普段と状況違うんで、…もしかしたら、最初ちょっと痛いかも」
そう彼に言われた瞬間、ナカにするっと大き過ぎるモノが入ってきて、俺は口と目を大きく開ける。
「あっ…はぁっ」
壁に手を付いたまま、片桐君に抱き締められながら体を揺さぶられる。
羞恥と幸福感、僅かな痛みを感じながら、浴室の熱気に包まれて、頭がクラクラとする。
「星七さん大丈夫?」
ぼうっとした意識の中、片桐君の声が遠くから聞こえる感覚がした。
俺は熱い息を吐き出し、こくりと頭を縦に頷いた。だが、ぐらり――視界が揺れる。
「星七さんっ?」
倒れかけた体を、咄嗟に、片桐君の力強い腕に受け止められた。
――
ぱちり、俺はリビングのグレーのソファの上で目を覚ます。
目線を横に向けると、傍に心配そうな顔をした片桐君がいる。
「星七さん、大丈夫ですか?」
俺は片桐君が着せてくれたのだろう半袖シャツを着て横になりながら、微かに笑って頷いた。
「…すみません。さっきは調子に乗りすぎました」
「ううん、俺もごめん。俺にはまだ、刺激が強過ぎたのかも…」
「え?」
「正直、片桐君とお風呂ってだけでどきどきしてたから…。その上、えっちまですると思ってなくて」
片桐君は俺の話を聞いて、申し訳なさそうに、ごめんなさい…と謝った。
いつになく、反省するように落ち込んだ顔をする片桐君を、目を瞬かせて見つめる。
彼のこんな姿を見るのって珍しい。何だかちょっと、かわいいかも。
「さすがに反省しました。次は、普通にお風呂、入りましょう」
水の入ったコップを差し出す片桐君に言われ、俺は「うん」と頷き、口元に笑みを綻ばせた。
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