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二重人格※

【前半R18】 ―― なんだあの人!ほんと失礼なひと! ていうか、すごく下品!ありえない!! もしかして話したいことあるのかなとか、悩みあるのかなとか思って、心配して損した!もう見かけても放っとこうっと! むかむかしながらキャベツの千切りをしていると、玄関ドアが開く音がした。 (あっ、片桐君が帰ってきた……!) 包丁を置いて、スリッパを履いた足をパタパタと動かして急いで玄関に向かう。 「おかえり片桐君」 笑って出迎えると、ジャケットを羽織ったスーツ姿の片桐君が、にこ、と微笑む。 「ただいま、星七さん」 相変わらずカッコいい片桐君の、何気ないその一言に、心臓がドキリとした。 ……なんかこれって、まるで新婚夫婦みたい? そう思っていると、突然頬にちゅっと片桐君にキスをされた。 「星七さん、エプロンすごく似合ってる」 嬉しそうな顔をした片桐君に言われ、胸がどきどきする。 「あ…うん。片桐君が最近買ってくれたよね」 言いながら、俺は着ていた白い無地のエプロンの裾を少しだけ手に握り、赤くなる顔を俯かせる。 すると、片桐君の片手に顎を持たれて、顔を上に上げさせられた。 「そんな顔されると、今すぐ襲いたくなるんですけど」 えっ? と、驚く暇もなく、片桐君に唇を塞がれた。 壁に追いやられて、強引に口内に片桐君の舌が入ってくる。 激しいキスに、口からたちまち涎が溢れ出し、顎へと伝っていくのがわかる。 呼吸、できない…… 「かたぎりく、っはぁ…っ」 「脱がせてえっちしたい」 て、えぇ……っ!? 「ダメ?」 片桐君は言いながら、既にエプロンの下に手を潜り込ませ、俺のズボンに手をかけている。 「い、今、キャベツの千切りしてる最中だし」 顔を赤らめながら、片桐君の腕の中から何とか抜け出そうとする。 「ちょっとだけ」 「…え」 「一瞬だけ」 耳元で片桐君の甘い声に囁くようにお願いされて、体が粟立つ。 玄関先の廊下で、片桐君が俺のズボンとパンツを脱がし、白シャツとエプロンを身につけた俺のお尻に、後ろから硬いモノを当ててくる。 なんか…最近ほぼ毎日こういうことしてる気が… 俺は壁に身を寄せながら、羞恥心にぷるぷると涙目で耐える。 「挿れますよ」 ビク 指を抜いた片桐君が告げる。 直後、ドキドキとして待つ俺の腰を片桐君が両手で掴み、ナカにぐっと昂るモノを挿れてくる。 全部入れ終わると、 「中、すごいキツい」 ぼそり、片桐君が色っぽく呟き、瞬間、首元まで自分の顔が赤くなる気がした。 片桐君が俺のナカでゆっくりと前後して動く。 入口から奥深くまで挿れて引いてを繰り返されて、体がビクビクと震える。 気持ちいい?と彼に聞かれて、頭だけで反応すると、片桐君の手にエプロンの下にあるアソコを持たれる。 「すごいヌルヌル」 ……! 「ていうか……イってる?」 片桐君にアソコを触られながら、腰を打ち付けられる。 「あ……片桐くん」 押し寄せる快感に俺は思わず声を漏らす。 「いいですよ、イって」 耳傍で片桐君に囁かれた次の瞬間、体をビクンと揺らして、片桐君の手に握られたまま赤面しながら射精する。 甘過ぎる余韻に、壁に手をつきながら、ふるふると身を震わせていると、 「エプロン汚れちゃいましたね」 背後から、軽く笑いながら片桐君に囁かれる。 「同じやつ何着か買っておかないと」 耳にキスをされながら彼に言われて、俺はまた顔を赤くした。 *** あれから――。 片桐君は、俺の目の前で涼しい顔して俺の作ったご飯を黙々と食べている。 とてもさっき帰ってきてすぐ襲ってきた人とは思えない…。 二重人格なのだろうか。思わずそう疑ってしまうくらい。 「今日も特に変なこと、何もありませんでした?」 「えっ?」 じーと見つめていると、おもむろに片桐君の口が動いた。 「変なこと?うん、今日も特に変わらずだよ」 笑って答えた次の瞬間、ふと、頭に彼のことが蘇った。 ――『……もしかして、女より男の方が気持ちいいとか?』 くうぅっ、今思い出しても腹が立つ!よく考えたら俺、彼にめちゃくちゃセクハラ発言されてるし、もっと色々言えばよかったかも! 「星七さん?」 ――ハッ 箸の動きを止め、こちらを見る片桐君になぜかドキリとする。 「何かあったんですか?」 「え…っ ううん。別に…なにも」 言って、ふっと視線を逸らすと、正面に座る片桐君が箸を置いた。 「………何かあったんですか」 ドキ 同じ言葉で、同じ質問。 なのに、彼の声色がさっきと全然違って、ただそれだけで心臓が一際大きく脈打った。 片桐君は、…まるでエスパーなのかと思うくらい鋭い。 それか、単に俺が分かりやすいだけなのかもしれないけど…。 だけど、なんて話せばいいのか分からない。 「え、ええっと」 顔を俯かせて黙る片桐君に、何故だかドクドクと鼓動が早まる。 「今日、前街で会った…あの人と会ったよ。茶髪の…」 「あいつに?なんで」 「たまたま、帰り道に居合わせて…」 「……。それで?」 「…それで、近くの公園で話してた」 正直に話し終えて、ちらっと様子を伺うように顔を上げると、見るからに不機嫌そうな雰囲気を漂わせる片桐君。 「全然…意味わかんないんですけど。居合わせたからって、何で公園で話す必要があるんです」 「え、だって彼…なんでか分からないけど、後をついてきてたから、家まで来られるのも困ると思って、それで公園に」 「どっちから誘ったんですか」 え…。 「公園に誘ったのは、俺…だけど……」 ぼそりと答えると、椅子に座る片桐君が体を少し斜めに向けて、長い足を組んだ。眉間には深くシワが寄せられている。 「放っとけばいいのに、何でわざわざ誘うんですか」 「ち、違うって、だから、あのままだと家まで来そうだったんだよ!」 「このマンションには、コンシェルジュも警備員もいる。言えばすぐに対応してくれるし、あの男に部屋までついて来られることはない」 それは、そうだろうけど……。 「それは分かってたけど、だけど彼、不審者なわけじゃないし」 「はあ?」 「俺だって、話したくて話してたわけじゃないよ!失礼だし、片桐君に嫌なこと言うし、片桐君に似てるのはせいぜい見た目だけだし」 「……見た目?」 「髪の色とか、雰囲気とか、ピアスとか…あと片腕にも多分、ちょっとタトゥー入ってたし」 すると、足と腕を組んだ片桐君が、目を閉じながら、はっと声を出して笑う。 「……つまり、“昔の俺に似てる男”が気になって、冷たい態度も取れない、ってことですか」 「きっ、気になんてなってない!」 ……ありえない!! 片桐君と似てるけど、でも実際全然似てないし! 「どうだか。星七さんのことは好きだし、愛してますけど、星七さんってちょっと浮気性なとこあるんで」 依然として目を閉じながら、片桐君が顔を顰めて淡々と話す。 ていうか…浮気性?何でそうなるんだっっ! 「男絡みについては、俺、信じてませんから」 「~信じてよ…!大体、話してただけじゃんっ!」 「信用できません」 「元はと言えば、彼、片桐君の知り合いじゃんか。なのに何で巻き込まれた側の俺が、こんなふうに責められなきゃならな……」 「――うるせぇな!」 突然、バンッッ!と机を拳で激しく叩きつける片桐君に、体がビクッと大きく揺れた。 目線の先にある、背筋を這うような恐ろしい視線に、体が固まって動けなくなる。 「……一々他の男に目向けてんじゃねぇよ!」 その気迫に圧倒され、何も言えずに顔を青ざめさせていると、そのうち片桐君がガタッと席を立ち上がって、部屋を出て行く。 俺はまだ、彼のことを理解しきれていない。 普段、絹のように優しい柔らかな表情を浮かべる片桐君。 だけど、ふとした時に、普段の彼とは似ても似つかないくらいのおっかない表情をした彼が現れる。 ………びっくりした。 男絡みか…。 ……気を付けないと。 俺は胸を撫で下ろしながら、テーブルの上に残されたままのご飯を、静かに見つめた。

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