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車でお出かけ※

【前半R18】 ―― 週末。 俺はベッドから体を起こし、うんと伸びをした。 そっと隣に目をやると、まだ夢見心地のすやすやと眠る片桐君の姿がある。 俺はそれを見つめ、ほのかな幸せが心を満たすのを感じながら、にこ、と微笑を浮かべる。 今日は、片桐君が車でデートに連れて行ってくれるらしい。 「片桐君まだ〜?」 既に私服に着替えて用意を済ませた俺は、玄関先で靴を履いて立ちながら、奥の部屋に向かってそう声をかける。 すると、 「すみません」 おもむろに私服姿の片桐君が部屋から現れ、こちらへ歩いて近付いてくる。 細いストライプ柄の黒の半袖開襟シャツに、細身の黒いズボン。胸元にはサングラスを引っ掛けていた。 「どうかしました?」 ハッ、しまった。 …つい、見入ってた。 「あ……、い、行こっか」 これからデートだっていうのに出かける前からこんな調子でどうするんだ俺は…。慌てて彼から背を向けると、 「!」 振り返った先の目前に、いつの間にか片桐君がいて、なぜか口を塞がれた。 「ぁっ…かたぎりく、んんっ」 ディープキスをされ、頬が染まり、目の端に生理的な涙が溜まっていく。 「体震えてる」 唇を離した片桐君に、耳元で囁かれてビクッとする。 玄関先で壁に追いやられて立つ俺の下半身へ、片桐君が手を伸ばしてくる。 「あ…っ」 香水の香り漂う片桐君にズボン越しにアソコをきゅっと触られて、俺は赤面する顔を隠すように彼の背に手を回す。 「星七さん、元から感度高かったけど、最近はもっと感じやすくなってきましたね」 頭上から、優しく語りかけるような片桐君の声が降ってくる。 片桐君の手が、俺のズボンのチャックを下におろし、スっとパンツの下に潜り込んでくる。 「…ぁ……」 「星七さんいつも立ってません?」 「~た、…立ってないっ!」 片桐君に軽く笑いながら言われて、また体の熱が上昇した。 「キスしただけでこんなにさせてる」 片桐君の大きな手に扱かれて、勝手に口が開いて、体がピクピクと反応する。 ぎゅっと彼の背に回した手に、力を込める。 「ぁ……片桐くん」 身を震わせながら呼ぶと、イキそう?と訊かれ、黙って頷く。 「星七さん後ろ向いて」 背後から片桐君の片腕に抱き締められ、彼の手に剥き出しになったアソコを擦られる。 ふわりと香る片桐君の匂いに、堪らなく興奮してしまう。 「たくさん出していいですよ、星七さん」 片桐君に囁かれた瞬間、 ……っ! 彼に震える体を抱き寄せられたまま、自分のモノから白い液が飛び出る。 目線を下に向けると、片桐君の手が俺の出したもので汚れていた。 「ご、ごめんっ!」 慌てて謝ると、片桐君は俺のを持ったまま、ちゅ、と頬にキスをしてくる。 「星七さんがえろ過ぎて、ムラムラしてきた」 片桐君が後ろから、硬いモノをお尻に押し当ててくる。 「えっ…だけど、これから出るん、だよね?」 「予定を後ろ倒ししましょう」 片桐君はそう言うと、驚く俺の体を抱き上げる。 俺はその後、片桐君に寝室に連れ込まれ、ひとしきり泣かされるのであった。 *** 「さて、行きましょうか」 1時間後。 胸元のサングラスを耳にかけ、どこかスッキリとした顔をした片桐君が言った。 「はい…」 俺はまだ残る甘い余韻に体をふらつかせながら、颯爽と歩く彼の後に続いた。 地下のガレージに着くと、片桐君がさっと車の鍵を取り出す。 ピッという電子音とともに黒い車のロックが解除され、片桐君がドアを開けた。 車に詳しくないけれど……なんか、多分すごく高そうだ。 車内に入って席に着くと、俺は隣に座る片桐君に目を向ける。 黒いシャツの半袖の下から、手首まで達するタトゥーがのぞいている。 「何ですか?」 ―ドキ 「あっあぁ、えっと、今日の片桐君は黒コーデなんだなぁって」 …びっくりした、急に声かけられたから。 多分、車内で片桐君といることなんてあまりなかったから、ちょっと俺、緊張してるのかも。 普段の片桐君とはまた、雰囲気が全然違うような気もするし。 「今日の俺、どうですか?」 シートベルトを締めていると、かけていたサングラスをかちゃりと外しながら、緩く口角を上げた片桐君に訊ねられる。 いつにも増してイケメンオーラを放つ彼を見つめ、俺はほんのり頬を染める。 「え……えっと… すごく、カッコいい……よ…」 目を逸らして答えると、片桐君がにこ、と笑う。 「星七さんと車出して遠出のデートって初めてだから、いつもより気合い入っちゃいました」 落ち着いた表情で微笑む片桐君の姿に、心臓がズキュンと射抜かれる。 「そ、そうなんだ……!」 気合い入っちゃいましたって、なんかかわいいな。 ううん、気合い入れても入れなくても、片桐君はどんな格好しててもいつだってカッコイイよ……っ!! 「ああ…、というより、俺ももっとちゃんとしなきゃ」 片桐君とのデートはもちろん楽しみだったけど、それと俺の服装が気合いが入ってるように見えるかどうかは、別だ。 白色の半袖開襟シャツに、下はシンプルなジーパン。靴は歩きやすい黒色のスニーカー。 アクセサリーとか、俺も付けるべきかな。 「十分可愛いですよ」 「え…」 「初めて見たし、その服」 片桐君に優しく笑いかけられ、胸がドキドキとする。 「うん、実は前に仕事帰りに買ったんだ」 片桐君と並んでても違和感のないように、一緒にいても浮かないようにと思って、ただのシャツじゃなくて、ちょっと高めのシャツを購入した。 学生時代には成せなかった、社会人パワーというものだ。 「言ってくれれば、俺が買ったのに」 「ううん!自分の着るものだし!」 ちら、と目を向けると、片桐君は顎に片手を添えている。 「うーん、そうだな。星七さんの服も、今日一緒に見に行きましょうか」 「えっ、いいよ!片桐君の貴重な休みなんだし、俺のことに時間使わないでも」 言うと、片手でハンドルを握りながら、片桐君が俺の方へと振り向く。 「星七さんの似合いそうな服、選んであげたいんですよ」 え……。 片桐君の穏やかな笑顔に思わずトクン、と胸を打たれた。 「まあ本当は、えっちな服買ってあげたいんですけどね」 「……。……え」 「だけど星七さん人目気にしそうだし、今度通販で俺が選んで買っておきますよ。色々と」 ハンドルを手に片桐君がアクセルを踏み込み、車が発進する。 俺は近々訪れるかもしれない辱めに遭う日を想像して、両手で顔を覆った。

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