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番外編:トリック・オア・トリート※(片桐side)

【微R18】※現在連載中のアフターストーリーより少し先、ハロウィンの頃のお話です。 ―― ある休日の朝、キッチンテーブルの席に座って、コーヒーを口にしていると。 「片桐君……!ちょっと遅れたけど、トリック・オア・トリート!」 がちゃっとドアが開けられた先に、コスプレ衣装に身を扮した星七さんが現れる。 「魔女?」 「そうそう!」 とんがり帽子に、青色のマントを羽織った星七さん。 右手には、お菓子の入ったオレンジ色のカボチャのバスケットが持たれている。 「いつの間に用意してたんですか」 「数日前に急に思い出して…ネットで買ってみた」 そう話す星七さんは、気恥しそうに俺から目を逸らしている。 「何でちょっと照れてるんですか?」 「、えっ!?……だって、ハロウィンの仮装するなんて、人生で初めてだから」 初めて……。 そのワードに、無意識に自分の頬が緩むのを感じる。 「へえ、初めて」 「そ…そうだよ。片桐君はあるの?」 意地悪げに囁くと、星七さんが恥じらうようにして言う。 「ないですよ」 「片桐君、背高いから何でも似合いそうだよね。ドラキュラとか…!」 星七さんはコスプレ姿のまま、楽しそうに笑いながら話す。 「あ、でもドラキュラは黒崎さんにも似合いそうだよね」 「黒崎?」 「うん。あと、佐野さんは……うーん。動物系かな。頭に耳が生えてるような仮装が似合いそう。狼とか」 星七さんは目線を上にして、顎に手を添えながら、真剣に頭を働かせているようだ。 「藍沢さんは?」 彼のその様子を見て、何となく訊いてみた。 「えっ、藍沢?」 星七さんが彼にどういうイメージを持っているのか、知りたかったのかもしれない。 「うーん……」 眉間に皺を寄せて深く考え込むような星七さんを、椅子に座ったまま黙って見つめる。 「何でも……似合いそう?」 「え?」 ふわりとした笑顔を浮かべる星七さん。 「藍沢、一見近寄り難いってイメージ持たれやすいんだけど、実はめちゃくちゃノリいいんだよ。だから、お茶目系でもカッコイイ路線でも、何でもやってくれそうだし、似合いそ……」 最後まで聞き終わらない内に、彼の腕を掴む。 そのまま彼の手を引いて歩き、辿り着いたソファの上に彼の体を押し倒した。 「えっ…?」 戸惑った表情をした星七さんが、俺を見上げている。 「どうしたの?………―あっ、違うよ!?」 「何が?」 「あ、あの…、変な意味で言ってるんじゃなくて… 藍沢は友だちだし、それ以上の意味なんてもちろんないっていうか」 慌てたように話す星七さんの服の下に片手を入れて、きゅっと乳首を摘む。 「あっっ! かたぎりく… ぁっ」 星七さんは頬を染めて息を乱している。 (…えろい魔女) 両手を入れて本格的に胸元をぐりぐりと指で弄ると、星七さんは目を瞑り、必死に唇を結んでいる。 「も…っ片桐くん……ずるいよ」 「ずるい?」 「トリックオアトリートって、俺が言ったのに、何で片桐君がいたずらする側?…」 星七さんは顔を赤くして、下から俺を眉をひそめて見つめている。 「じゃあ、トリック・オア・トリート」 「!?……えっ!」 彼の体の上に跨って座った体勢で、真顔で告げる。 星七さんは驚いたように声を上げ、困った顔をした。 「“トリック・オア・トリート”」 再度告げて、彼に迫ろうとすると、 「まっ、まって、…片桐くん待って!」 思い出したように、星七さんがソファの横に倒れて置かれた、カボチャの入れ物を手に取る。 「ほ、ほらっ!」 両手でバスケットの柄を持ち、目の前にずいっと差し出してくる。 お菓子が入ったカボチャのバスケット越しに、潤んだ目を伏せ、耳まで赤くした星七さんの姿が映る。 「確かに美味しそう」 笑いながらぽつりと呟くと、星七さんが、え…?と言った顔をして俺に目を向けた。 彼の手から――カボチャの容器が落ち、中から飛び出たお菓子が、横たわる彼の周辺に散乱する。 彼の足を開き、腰を前後に動かす。 桜色に染まった頬に流れる、彼の涙を舌で舐め取る。 「美味しい」 塩味を含んだ彼の味に、より一層本能が刺激される。 「片桐くん…っ ぁっ、はぁっ」 「美味し過ぎて、しばらく止められないかも」 きゅうきゅうと離さず締め付けてくる、甘い体を食べ尽くす。 何度食べても飽きない、病みつきになる魔性のお菓子。 蕩けた表情をする彼を見つめ、満足げに口角を上げる。 ――ハロウィン、悪くない。 初めてそう思えた、とある休日の出来事だった。 終。

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