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ファンタジーな話⑤※

【R18】 突然、口内にぬるりと湿った感触が侵入する。 これって、片桐君の舌…っ? 「…っ…ふ…」 手で胸を押し返すが、ビクともしない。 片桐君の舌に舌を絡め取られて、吐息が漏れ出る。 いつの間にか閉じてしまっていた目をゆっくりと開けると、至近距離で俺をじっと見つめる片桐君がいた。 吸い込まれそうな、ビー玉のように綺麗な茶色い瞳。センター分けされた茶髪の前髪の下から見える眉は、程よい太さで凛々しい。 あ…何どきどきしてるんだ俺…。 突然キスされて、付き合ってるわけでもないのにときめいたりなんかして。 そもそも俺、男だっていうのに…。 「あ…の…っ、かたぎりくん」 超簡単に釣れる軽い男だって思われたくない! ……いやそうじゃなくて、出会って間もない人とふしだらな関係になりたくない! もし、彼とちゃんと色んな工程を踏んで、付き合うことになったら……そしたら―― 「…ひゃっ!?」 ぼうっと物思いにふけっていたら、彼に服を捲りあげられていた。 胸の辺りに、ぬるっとした、彼の舌の感触と思われるものが這い、体がビクッと大きく跳ねる。 「かたぎりく…っっ」 「じっとして」 「あ…っ!」 片方を舌で舐められ、もう片方の乳首を彼の指で柔く摘んで弄られている。 「か、かたぎりくん…」 甘い刺激に体がぷるぷると震える。 未だに状況が掴めない。何故こんなことになっているのか、彼が何を考えているのか、皆目見当もつかない。 「っあ!ダメだよ……!」 彼の手がズボン越しに下半身に触れて、俺は顔を真っ赤にさせて叫ぶ。 「星七さん、体起こさないで」 「え…っだ…だって」 「ちゃんと言うこと聞いて」 …何で俺が、彼に注意を受けているんだろうか。 片桐君に起こしかけた体を再び制すように押し倒されて、柔らかなベッドに戻される。 「そんなに不安がらなくても大丈夫」 横になったまま身を固まらせていると、彼の手にそっと頭を触られる。 「痛くしないようにするから」 え……? 一瞬、見えていた景色がテレビのチャンネルのように切り替わる感覚がした。 「――ぁ…っ」 裸のお尻のナカに、彼の指が深く埋まる感覚に目を見開く。 なにこれ…、何この感触……。それに、何だか時間が飛んで進んだような… 「ぁっ や…だ、片桐君、っ指」 片桐君に指でぐりぐりと体の奥を責められて、感じたことのない、得体の知れない感覚が湧き上がってくる。 「ん… ぁっ」 やがて朦朧とした意識の中、濡れた目を開けると。 ――上だけ裸になった片桐君が、腰をゆっくりと前後させていた。 あれ……これ、今もしかして、ナカで動いてるのって… 「っあ、はぁ」 皮膚に擦れる大きなソレにぞわぞわする。 まって、何がどうなってる…っ!? 頭を混乱させる俺の上で、少し汗をかいた色っぽい雰囲気を漂わせた彼が、俺を見て余裕の笑みを浮かべる。 何も理解できなかった。 今のこのシチュエーションも、彼を見て胸が高鳴る理由も。 突然こんなことをされて、嫌だと思えない自分も、すべて――信じられない。 「…っっ!」 ナカに何かがどくどくと流れ込んでくる感覚に、彼に持たれた足が痙攣する。 口から涎が垂れる。 放心状態の俺に、彼がキスをする。 「“終わりましたよ、星七さん”」 彼の口角を上げた口元が映るのを最後に、俺はまた意識を手放した。 *** 俺は見慣れないホテルの部屋で目を覚ます。 あれ…ここ、どこだっけ…。 ―『痛くない?』 ―『片桐くんっ こんなこと…ダメだよ』 ―『こんなこと?』 ―『あぁ…っ かたぎりくん…っ』 「うわぁぁあっ!」 記憶を辿っていきながら、俺は顔を真っ赤にさせてベッドから布団を剥いで飛び起きる。 「星七さん?」 少し離れた場所で、ポットのお湯をマグカップに注ぐ片桐君が、驚いた顔をして振り向く。 「大丈夫ですか?」 コップを手にした片桐君がこちらに近付き、ベッドの脇に腰を下ろす。 「だってっ、さっき片桐君が…」 「俺?」 …あれ…。 「俺が何ですか?」 「…えっと」 首を傾げる彼を前に、俺は言葉を詰まらせる。 もしかして、さっきの、夢……? 「や…やっぱり、なんでもない!」 俺は慌てて彼から顔を逸らして言う。 確かにお尻に変な違和感も無いし、さっき彼とえっちしてた気がしてたけど……してない…のか? だとしたら、かなりリアルな夢だったな…。 「もう外は夕方なんで、今日は一旦家まで帰った方がいいですね。送ります。…名残惜しいですけど」 端正な顔ににこりと、綺麗に笑みを乗せる彼。 羽織られた清潔感あるジャケットと、スラリと組まれた長い足。 茶髪の頭とキラリと光る耳のピアス。 紳士的なのに、どこか怪しい雰囲気を漂わせる彼。 彼って、一体…。 さっきの夢の中の彼が蘇って、俺は無意識に頬を染めた。

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