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第76話 修平の提案(side保)

「修平の家族ってどんな感じ?」 「うちはですね」 修平の話を聞こうとした時、丁度スマホが震えた。 修平といるし、と思ってそのままにすれば、修平から「どうぞ、出て下さい」と言われて画面を見る。 イベント会社からだった。 今日はバイトを入れてないから、ヘルプの要請だろうか? ただ、今日は大学の課題をやる時間として一日空けていたし、何よりも居酒屋に比べてヘルプが掴まりりやすい。 俺は頭の中でそれらを計算し、出るのをやめた。 「大丈夫ですか?」 「イベント会社からで、多分ヘルプの話だから大丈夫。この後何回も掛かってきたら流石に出るよ」 心配する修平にそう答えると、修平の興味はイベント会社の方に行ったようだ。 「そう言えば、あの会社のバイトって、保先輩普通に求人で探したんですか?」 俺は首を振る。 「いや、元々は居酒屋のバイトで一緒だった人の紹介」 頭にバイト仲間を思い浮かべ、ふとそのバイト仲間についての疑問を思い出した。 「そう言えばその人、バイトを紹介してくれた後、直ぐに音信不通になっちゃってさ。専門学校に通ってたみたいなんだけど学校も違うから会わないし、居酒屋も辞めちゃったし。どうしたんだろ?」 「どんな人だったんですか?」 「んー、男なんだけど、人懐っこくて可愛い感じの子。アイドルとかにいそうな感じ?」 「どんな感じで誘われたんですか?」 修平に言われて、俺は記憶を辿る。 「ああ、そう言えば……イベント会社の紹介は、特定の人にしか紹介しないって言ってたかな。だから他のバイト仲間には秘密にしろって」 「成る程。他に変わった様子はありましたか?」 「うーん……いつも元気な子だったんだけど、その頃元気がなくて、何かあったのかな?って思ってたかも。時給が良いからバイト紹介してくれたのは感謝してるんだけど、俺がバイト行く時にはいなかったから、何でかなーって」 「……そうですか。因みに保先輩、次にそのイベント会社のバイトが入っているのはいつですか?」 「えーと、明日」 「どんなイベントですか?」 「企業向けの、商品即売会とか結構真面目な感じのイベントだったと思う」 「わかりました。保先輩、俺、明日も明後日も泊まって良いですか?」 「えっ? うん、まぁ良いけど……どうかしたの?」 修平からされた質問がまるで尋問されたみたいで少し驚いたが、もしかして修平も同じイベント会社でバイトしたいと思っているのだろうか? 俺がそう聞くと、修平は「ちょっと気になることがあったので、少し調べようかなと思っただけです」と笑って答えた。 「……ところで、保先輩」 「ん?」 「お母さんの件が解決したら、一緒に住みませんか?」 「へっ?」 俺は、六畳の部屋をぐるりと見回した。 「……いや、流石に狭くない?」 契約書を見ないとわからないけど、確か単身者用だった筈だし。 俺がそう言えば、修平は笑った。 「違います。保先輩も俺も、引っ越しするってことです。ほら、大抵の物件は二年契約ですよね? 年末年始には保先輩もご実家に帰省するでしょうし、その時お母さんと話せれば、来年の三月とか。……色々心配なので」 ?? よくわからないが、全く嫌な提案ではなかったので、俺は頷いた。

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