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第6話 ブルース

 零士と草太が暮らし始めてもう6年。 働いている『ジュネ』は地下にある。そのビルの1階、路面にジャズバーがあった。  『バー青山』ジャズ、ブルース、&モア、と銘打って、物知りのマスターと仲間たちが集まる。  零士たちも仕事終わりに立ち寄る事が多い。 常連の、バンマスと呼ばれるブルースマンとセッションするためだ。  マスターの奥さんはジャズピアニスト。草太のピアノの先生でもある。  常連が集まるといつの間にかブルースコードを爪弾く人がいる。誰かが即興で歌い出す。 「70年代のブルースシーンは、貧乏な歌が多かったな。アメリカの迫害された黒人にあやかってたんだ。」 「関西っぽいね、ブルースのイメージ。 西から、って言われてた。」 「零士、何か歌って。」  掠れたロッド・スチュワートを思わせる零士の声。零士ははにかみながら「マネー」をアレンジした歌を歌い始める。 ーそんなに俺が欲しいのか ー身体を見せて稼ぐ ー心はすり減っていく ー気にしないさ ー毎日、朝日は昇る ー愛する人が欲しがる物は ー俺じゃない ーオーノー! 「イェーイ!」 「いつの時代にもブルースは、あるな。」  バンマスがすごいギターテクで、ハウリンウルフを弾き始めた。 「キリング・フロアだ。」 「ああ、レッドツェッペリンの レモン・ソングだね。」 「みんな古い事、よく知ってるなぁ。」 「あの、ウルフのダミ声がいいんだよ。」  櫻子さんが卓上の子供のおもちゃのピアノを弾き始めた。以前お客さんが忘れて行った子供用。  人差し指で「500マイル」を弾いている。 櫻子さんはピアノの先生。マスターの奥さんだ。 バルーンみたいに太っていて歌が上手い。  誰かがハモニカで合わせる。ブルースハープ。 「ユキチ姉さん、来てたの?」  ユキチ姉さんのブルースハープは最高だ。 ーハンドレットマイル ーあんたはもう100マイルも行ってしまった ーハンドレットマイル、ハンドレットマイル、 ーもう500マイルも行っちまった

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