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第11話 合法的
ホストとギリギリの駆け引きをするのが姫たちに人気なのだ。
支配人として店に立つ零士は、あまり客と接触しない。
ホストとダンサーが席に呼ばれる。
「稼ぎたい奴は姫の席についていいよ。
君たちの腕次第だ。あくまでも品よく、ね。」
身体を見て場内指名してくれる姫は多い。
外国から来たダンサーは、身体を鍛えるために、意外とストイックな生活をしている。
店の寮になっているマンションも、キチンとしている。近所の評判もいい。
昔は組対(警察の組織犯罪対策課)が店の前の道路に張り付いていたが、今は見かけない。
ひどく酔っ払った姫が、店に入って来た。
大声で喚いている。
「流星を指名するわ。」
「流星さんはホストではないので,指名とかは無理ですね。」
黒服が、なだめている。騒ぎに流星が奥から出て来た。店には出ないので、スーツにメガネで奥で事務処理をしていた。
零士に言われて席に着いた。この客は
「流星、しばらくだったわね。
荒井課長から聞いたのよ。
なんで、勝手にいなくなっちゃったの?」
「ずいぶん酔ってるね。
キミとは話し合って別れたはずだろ。
今ごろになってどうしたんだ?」
奥から陸が出て来て見ている。
「あ、あたし、あの人知ってる。
ヤクザよ、ヤクザ!
この店はヤクザの店なの?」
「静かにしてくれ、由香。
他のお客さんに迷惑だ。」
「あたしと結婚するって言ったじゃない。
ひどいよ。」
「話し合っただろ。慰謝料も払った。三千万。
念書ももらった。もう関係ないだろ。」
金を出したのは陸だった。
由香は、泣きながら流星に抱きついて来た。
サラリーマンの普通のスーツを着て、事務作業をしていた流星は、ホストたちの間で異彩を放っている。
イケメンリーマン。こんな人と結婚したい、と思わせる男だ。
「流星はもうあたしを愛してないの?
セックスもしたのに、いきなり別れるなんて無理。」
「この店は誰に聞いたんだ?」
悔しそうに由香は言った。
「荒井課長よ。
教えてもらうために、ホテルに行ったの。
セックスが条件だった。あんな男、気持ち悪い。」
抱きついて号泣する。
優しく肩を抱くと、途切れ途切れに
「流星を嵌めた、って言ってた。
倒産した会社の責任を全部流星に押し付けたって。最低な奴。」
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