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第12話 後始末
泣きながら、由香の知ってる事を全部話してくれた。 陸から、流星が会社にやらかした事になっている損金を横取りしたと自慢していたらしい。会社も今はない。
三千万。会社を通さず荒井課長が受け取ったという。どうなっているのか。ヤクザがむざむざと金を出すわけがない。由香にも三千万の手切金。
陸に話を聞きたい。由香の相手をソムチャイに任せて、事務所に行く。
由香は綺麗な顔とマッチョな身体のソムチャイに慰められて少し落ち着いたようだ。
店のサービスで出されたシャンパンで乾杯している。
「ソムチャイ、由香を頼む。大事な人なんだ。」
由香の頬にキスして席を立った。
「大事な人?あたしが?」
ちょっと機嫌が直ったようだ。
「陸、なんであの会社に金なんか払ったんだ?」
「ははは、ずいぶん前の話だな。
あの腹黒い荒井って奴からは、きっちり六千万回収したよ。あの会社も倒産させた。
荒井は今頃、東京湾のアナゴの腹の中だろう。
ヤクザ舐めんなよ。」
今は倒産して、無くなった会社でも、荒井課長は依願退職した事になっていたらしい。
早期退職者を募っていた会社は、退職金の上乗せを約束して辞めさせた。経営が傾いていた会社は,持ち堪えられなかった。
陸は全部掠め取った。以前から会社を脅していたらしい。彼らの巧妙な手口で。
「悪事がバレる前に、由香の身体も頂いて、荒井も鬼畜だな。」
陸に話すと、
「もう少し生かしておけば良かったか?
生き地獄ってのもあるんだよ。
俺たちのやり方だ。」
「陸、胸糞な話は止めろ。」
「まだ、家族が残ってたな。
そいつらにも落とし前、つけてもらうか?」
大学生の息子がいたと言う。
「誘拐うか?(さらうか)
息子を一生、飼い殺しにするか?
おまえ、元カノにまだ情があるんじゃないのか?
俺を妬かせるなよ。」
陸の甘い囁きに流星は心が乱れる。
「息子は勘弁してやってくれ。」
荒井課長は失踪した事になっている。死亡ではないので保険金も降りない。
退職金は全額、組が手にした。ある意味、合法的なやり方だった。
ヤクザだ。法の抜け道はよくわかっている。
ただでは終わらない。
流星は、陸の酷薄な横顔にゾッとするのと同時に堪らない魅力を感じた。
「今夜は陸に抱かれたい。
メチャクチャにされたい。」
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