15 / 198

第15話 ジャズバー

 夜も遅くなるので、太郎を連れていけない。 零士と草太に声をかけた。 「美咲の弟がピアノ弾きなんだ。 あのジャズバーに一度連れて行ってくれないか。」 零士が、 「ああ、美弦なら知ってるよ。 美咲と同じ、幼馴染みだ。いつ来る?」 「連絡してやって。」  本人に許可を取ってあるので、メールアドレスを伝えた。零士がホストクラブの支配人をやっているのを知って驚いている。  『ジュネ』にも一度来いよ。とメールを送った。 早速、零士に会いに先に『ジュネ』に来た。 「いらっしゃいませ。ご指名はごさいますか?」 「あ、零士さんを。」 「あの、支配人は指名は受けないので。 今、呼んできますね。」  零士と一緒に可愛い感じの草太が来た。 「よく来たね。紹介するよ。 俺の恋人、草太だ。一緒に暮らしてるんだ。」 「え?恋人?男の人だよね。」 「美弦は知らなかったの?  俺、ゲイなんだ。  あ、この店はゲイバーではないよ。  ホストクラブ。   だから、女性のお客さんが多いだろ。」  美弦は驚きを隠せない。 「美弦は今,何やってんの? え?無職?」 「そう、俺ピアノの仕事がしたいんだ。」 「オッケー。ウチでやりなよ、弾き語り。」 「俺、弾けるけど歌えないよ。」 「何か一曲、弾いてみて。」  零士の強引な推しに、ピアノの前に座った。 クラシックしか弾けない。 (どうしよう?)  悩んだ末、ショパンの「別れの曲」を弾き始めてしまった。  店の雰囲気に合わない。別れを思い出させる曲。弾き終わると 「ブラボー、ブラボー。」?  大きな拍手で立ち上がったのは、あのアレックスだった。  零士が 「いつ帰ってきたんだよ。パリから。」 「さっき着いたばかり。飛んできたんだよ。 零士に早く会いたくて。」 「嘘つけ!」  美弦に向かって 「いらっしゃいませ。 アレックスよ。あなたのアレックス。」

ともだちにシェアしよう!