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第17話 新人たち
『ジュネ』にはイケメンが増えた。
以前、反社の組織とチャイニーズマフィアの小競り合いがあった。
新宿抗争、と一部の人間には語り草になっている。その時、活躍した右翼団体「大日本倭塾」(だいにほんやまとじゅく)の若者が数人、陸に惚れて『ジュネ』に入店していた。
みんな一本筋の通った若者たちだった。
店は賑やかになった。陸はこの店のオーナー。
広域指定暴力団T会の若頭だ。
地元の暴走族をまとめて、『倭塾』を立ち上げた佐波一家の若頭、若松は死んでしまった。陸も撃たれた「新宿抗争」九死に一生、だった。
陸と若松は折半分けた兄弟盃だった。
若松を慕っていた、倭塾の若いもんが、生き残った陸の元にやって来たのだ。
彼らは愛国心は強いが、東南アジア系のウォーキングダンサーたちとも仲良くやっている。
美弦は、一階のジャズバーでピアノを弾いた。
ジャズもブルースも知らない。
慣れ親しんだピアノ曲を弾いた。みんな静かに聞いてくれた。
(ここは、居心地がいい。)
みんなだんだんブルースをやり始めた。美弦は見よう見まねでピアノを弾いた。
(なんだか、楽しい。めんどくさい事言う人がいないからか。)
このまま,家に帰って煩わしい母親が根掘り葉掘り聞いて来るのが嫌だ、と思った。
一人の夜を過ごすのがとてもつらく感じた。
誰かの温もりが欲しい。飲みすぎた。
目が覚めると零士の家だった。零士と草太の家。愛に溢れた恋人同士の家。
飛び起きた。
「ごめんなさい。」
ガバッと起き上がって周りを見た。
「おはよう、朝は珈琲?
それともあの不味いお茶?」
「ワオーン!」
「ワアッ。」
「マックス、はじめまして、だろ?」
でかくて強そうな犬が飛んできた。パツパツの筋肉の身体は重量級だ。
「こんなすごい犬がいるんだね。」
「ああ、家族だ。マックス。
美弦だよ。友達だ。」
犬が頷いたように見えた。賢い犬だ。
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