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第23話 部屋住み
部屋住みとは言っても、とりあえず陸の世話は流星がやっている。甲斐甲斐しくバシタの仕事をしている。
左千夫はウォーキングダンサーたちのマンションに住む事になった。
一棟丸ごと組の持ち物のマンションで、空き部屋があった。上の会には組の幹部たちが住んでいる。
ダンサーたちはみんな気のいい東南アジア系、外国人だ。国に仕送りしているものが多く、まじめな暮らしぶりだ。
陸は中国人を入れない。途端に風紀が乱れる苦い経験があった。
「おまえ、ダンサーやるの?」
みんなの衣装を見て左千夫はおじけ付いた。
(あんな小さな布だけでランウェイを歩くなんて、俺には無理無理。)
みんな綺麗な身体をしている。全身脱毛してるのか、毛、がない。暇さえあれば筋トレをしている。プロ意識がすごい。
「俺、グエン。ベトナムから来ました。
妹も一緒に住んでます。
妹はベビーシッターをしてる。」
妹は組の風俗に売られそうになった所を零士が助けて、兄弟一緒に、ここに住まわせた。
国では、12才の頃から身体を売らされてきた。グエンも,だ。男も女も子供が売られる。
買うのは、日本人。上級国民と言われる日本人に顧客が多い。著名人が多い。中国人の富裕層もいる。欧米人もいる。
陸は店で使うダンサーをきちんとしたルートから募って正規に日本へ連れて来るが、中には現地で子供の頃、売られた者もいる。陸たちが救い出した。
「胸糞な奴は雇わない。紹介者も、だ。
ヤクザだってイヤなシノギは避けて通る。
ガキを使った商売は御法度だ。」
日本に来る時は、必ず本人の希望を聞く。
「甘いな。」
「ああ、これは、伯父貴。」
本家からがめつくて有名な、枝の組長が来た。枝とは言え、本家盃の、伯父に当たる堂島孝平だ。
「ガキは金になるんだよ。」
イヤな商売をさせようとする。
序列を重んじる極道の世界で、伯父の言う事には逆らえない。
「本家の会長は,ガキには手をださねえって
言ってたらしたんですが。」
「何、甘い事、言っちゃってんの?
この頃のチャイマのえぐい商売に負けてんじゃないの、陸ちゃんよ。」
若いもんを従えてドスの効いた声で脅す。態度がデカい。
(人のシマに来て、何ほざいてんだよ。)
「伯父貴、そんなに不景気なんですか、本家は?」
スパーンッと殴られた。若いもんにやらせないで、伯父貴自ら手を下した。
「陸もずいぶん、偉くなったもんよ、のう。
誰のおかげでここで商売出来ると思ってんだ?
あ?」
「誰って、俺、何か、借り作りましたっけ?」
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