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第25話 太郎7才
太郎は7才になった。小学生だ。
まじめに合気道とピアノを続けていた。
小学校は近所の公立だ。初めはまったく字も書けない太郎は浮いていたが、一学期が終わる頃にはみんなと同じく読み書きが出来るようになっていた。
読むのが好きで、自分で絵本を読みながら覚えてしまった。結構な漢字も読めるので驚く。
自分が必要だと思う事は自然に覚える。興味ない事は中々覚えない。
徹司は自然に任せる事にした。急がなくても年令に合わせて吸収していく。
「おもしろいか?学校。」
「うん、ちょっとみんな幼稚だけどね。」
「ワハハ、聞いたか?美弦、
同級生が幼稚だって。」
美弦の膝に抱かれながら、話している。
「たろは大きくなったな。重たいよ。」
「うん、俺、早く180センチになる。」
この頃,太郎は自分の事を、俺、と言うようになった。もう可愛いボク、ではないのだ。
同級生の中では背も高い。あと10年もすれば、
180センチも、超えるだろう。徹司も大きい。
「美弦も180センチ、ある?」
「いや、俺は178センチだ。」
ピンポーン!誰か来客のようだ。
「ハイ、こんにちは。」
アレックスが来た。美弦のいる所を嗅ぎつけて、しつこく付きまとっている。この頃は美弦のいる確率の高い徹司の家に来る。
「アレちゃん、身長何センチ?」
「おお、私は184センチ。」
「大きい!いいな。
俺も早くアレちゃんを追い越したい。」
「なんでアレックス、ここにいるの?」
「冷たいなぁ。美弦と一緒に仕事に行こう、と思ってきたのに。」
美弦はあの『ジュネ』で弾き語りをしている。
歌謡曲もだいぶ覚えた。意外と歌も上手い。零士が歌う時、伴奏する事もある。
お客さんのカラオケがわりに受けがいい。
アレックスが時々、自己流のシャンソンを歌う。相変わらず綺麗な身体を見せる仕事。
お客さんと昭和歌謡を歌う事もあるから美弦も歌謡曲を覚えた。
「昭和歌謡って不倫の歌が多いね。
みんな不倫に憧れてんのかな?」
陸は、あの非合法な子供の売春事業を、やれ、と脅かされている。本部に知れたら切腹物だと言うのに、あの伯父貴が諦めない。
チャイナルートで児童ポルノを進めている。
陸は、叩き潰すタイミングを謀っている。
徹司は,美弦との長すぎた春を思っていた。
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