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第27話 証言

 次の日、学校から呼び出された。たまたま家にいた美弦も一緒に来た。  葵ちゃんの親も来ていた。 担任が 「昨日の下校時に太郎くんが葵ちゃんを引きずり倒してケガさせたと言うのですが。  証言してくれた2年生の女子から聞きました。」  もう泣いている葵ちゃん。 「なんでだよ、葵ちゃんあの車のこと、言いなよ。」 「そんな、脅かして言わせるのは良くないよ。」  わかったように口を挟む担任の先生。 「ちょっと待ってください。 うちの息子が一方的にケガさせた、と言うのですか?」  本人から聞いた話をした。 「はあ、知らない車に乗せられそうになったって言うんですね。」 「そんな車いなかったよ。」 「そうだよ、この子しかいなかった。」  2年生の女子が口を揃えて言う。変な正義感の強い子供たちだ。  美弦が 「近所の人が何か目撃してるかも知れない。 聞いてみましょう。」  担任は、目を見張るようなイケメンの美弦に、さっきから緊張しているようだ。 「あの、こちらの方は?」 「ああ、太郎の叔父です。母親の弟。」  担任が 「事を大きくしないでください。 イジメは学校の恥ですから。」 「イジメと決まったわけじゃない。 ではどうしろ、と?」  葵の親が 「葵に謝ってください。 もう乱暴な事はしないでください。 先生の前で約束して。」 「太郎は意味もなく人に乱暴するような子じゃないです。キチンと調べましょう。」  美弦が抗議した。 「とにかく、太郎くん謝って。 もうしないね? 太郎くんは葵ちゃんが好きなのかな? だから手が出ちゃったのか。  二人で仲直りの握手しよう。」 「いやだ!俺、なにもあやまることしてない!」  太郎の目にも涙が光っている。 徹司は太郎を抱きしめて、 「私は息子を信じています。 私なりに調べてみます。 葵ちゃん、怖かったね。 無事で良かった。」  徹司は探偵の吉田に連絡した。 「あいつなら調べてくれるはず。 以前、零士におかしな事をして来る秋吉って医者を調査してもらった事があるんだ。  元警察官だから、情報を引き出してくれるだろう。聞き込みも彼ならプロだ。」  美弦も悔しさを滲ませて 「あの言い方はないね。教師ってクズだな。 俺ならグレちゃうよ。」  俺は一人じゃない、と美弦に感謝した。 少し気持ちが救われた。

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