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第28話 誘拐頻発
陸は、会長の兄、愚鈍な堂島孝平にせっつかれていた。
児童ポルノに使う後腐れのない子供を用意しろ、と言われていた。
「一番やりたくない仕事だ。
バカの堂島孝平が仕切れるわけもない。
必ず、足が付く。連座でうちの組まで潰されかねない。」
店に吉田が来ていた。元警察官の敏腕探偵だ。
「よお、珍しいな。」
「ちょっと気になる事件があって、な。」
「所轄か?」
「ああ、だが桜田門に繋がるかも知れない。」
「へえ?なんだよ。広域?」
吉田は小さな声で
「児童ポルノ。」
と言った。陸は飛び上がりそうになった。
「何かつかんだのか?」
(ウチがこれから関わる仕事、どこでかぎつけたんだ?)
吉田は、高校生の頃、唯一勝てなかった空手の相手だ。心にしまってある陸の初恋だ。
絶対に知られたくない。長い付き合いになった。
「近頃、不審な失踪事件が多いんだ。」
「子供の?」
「子供が多いが大人もいる。
噂だと臓器売買が絡んでいるかも知れない。
だから、まあ、子供の行方不明が多いんだ。」
子供の臓器移植は、ドナーの年齢制限がある。
みんな新鮮な臓器が欲しいだろう。
死にたての新鮮な臓器。
「不気味だなぁ。」
「それと、児童ポルノの摘発も増えてるらしい。
本店(警視庁)で聞いて来たんだが。」
(ぶっちゃけ、吉田には、堂島の児童ポルノの店を潰す計画を、話してもいいか?)
それで今の日本では、子供の失踪事件が年間、
9才以下で1000人を超えている。10代では15000人に迫る人数だ。
理由は、迷子や家出だけでなく誘拐や事故の可能性もある。
警察の共有するデータベースがある。
「近頃、頻発しているのはやっぱり誘拐の線だ。
調査の依頼が入っている。事件くさいんだ。」
「依頼って、俺の知り合いか?」
「お前もよく知ってるだろう。
この店で働いてるらしいな、美弦って。」
「ああ、ピアノの弾き語り。」
「そいつの甥っ子が事件に巻き込まれたらしい。
俺が調べてるのはそれだ。」
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