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第36話 堂島鉄平
広域指定暴力団T会。
T会(登龍会)は5代目、堂島鉄平が会長を務めている。5代目は世襲では無く、子供のいない先代会長、藤尾集蔵が鉄平を見込んで襲名させた生粋の子飼いだった。それだけ腹の座った男、と恐れられ、また、尊敬も集めている。
藤尾集蔵の人柄が日本の暴力団の体質を変えた、とまで言われている。男の中の男。
今、藤尾は引退宣言をして地下に潜っている。
日本を裏から眺めているようだ。
数々の伝説が映画にまでなっている。海外のマフィアの間でも、一目も二目も置かれている。世界に日本の「ヤクザ」を認めさせた。
その藤尾集蔵の跡目を継いだ男、堂島鉄平。
警察も認める登龍会5代目だ。
藤尾さんの意向で汚い事はしない主義。
「きれいごとで極道が務まるか!」
反対勢力のヒットマンに銃口を向けられ、一振り日本刀で叩き切った。
そして懲役5年。司法の判断は、正当防衛。
銃は人殺しの道具だ。初めに向けた方が悪い。
出所して、勤めを果たし跡目を取った。
人を斬り殺せる刀を持っていたことは、問題になった。銃刀法違反で別の組員が逮捕された。
堂島鉄平のためなら命を投げ出す。心酔した組員が多数いたのだ。堂島鉄平という男。
同じ親を持つ、その兄が堂島孝平だ。弟の威を借る、狐。なんとも情けない。
登龍会の枝の枝、小さな組を持たせてもらって組長を名乗っているが、如何せん、人徳がない。
器が小さい。
「極道は金だ。金がものをいう。
デカいシノギをすればみんな俺に従うだろう。」
曲がりながらも一家を構えている。金が必要だ。悪どい仕事に手を染めて来た。
(ああ、この人は学習しないんだな。」
金の無心に来た兄に金庫から数百万、束を3つ4つ積み上げた。
「兄さん、シノギはどうしてるんだ。
本部にまだ上げてないだろ。」
「はっ、金は天下の回りもの。
おまえばっかりずるいじゃねえか」
こいつの組の若いもんがかわいそうだ。
そんな孝平が、ある男から上手い話を
聞きつけた。自称大学教授を名乗る秋吉と言う男。もう初老だが、薬事法違反などで服役していた。刑務所で一緒だった、今は堂島一家にいる男を通じて孝平にコンタクトをとって来た。
「親分さん、私は以前大学教授で医者でもありました。その繋がりで実入りのいい仕事を見つけたんですよ。」
声を潜めて
「児童ポルノ、ご存知でしょう?」
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