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第38話 日本人の子供
その頃、秋吉はC国人の夫婦と知り合った。
その夫婦は子供専門の誘拐犯だった。
「日本人は子供を一人で通学させるよ。
おめでたいね。マヌケだね。」
通学路に車を停めて後部座席に押し込むと急発進する。
「声を出す暇もないよ。すぐ薬で眠らせる。
以前はウイ○ルで攫ったりしてたんだけど、
日本人の子供が評判いい。健康で清潔。」
臓器を取るためだ、と聞いて秋吉は吐いた。
まだ人間の心が残っていたのか。
「可愛い日本人の子供、攫って来てくれないか?
欲しい人がいるんだよ。」
「臓器じゃなくて身体全部が必要か?
あんた欲張りね。」
大臣の岩橋剛助の注文だった。
「女の子より男の子がいいね。」
なぜか、小児性愛の変態は、男の子を欲しがる。変態共通の傾向に笑える。
こんなことで笑える秋吉も相当な変態だ。
以前から秋吉は徹底した面食いだった。
ルッキズムの塊。顔のいい男が好きだ。
今でも零士を忘れてはいない。
堂島孝平の元に連絡があった。
「子供、用意出来ました。
日本人が一人。ベトナム人が一人。あと、タイ人です。みんな男。8才から9才です。」
タワマンに客が来るのは明日になった。
とりあえず、堂島の事務所に連れて来る。子供は孝平が預かるのだ。堂島孝平の事務所兼自宅。
地下に鉄格子の嵌った部屋がある。ヤクザの脅しに使う拷問部屋だった。
孝平は残酷なことが好きなサイコパスだ。今までもここで痛ぶられて死んでいった者が複数いた。血生臭く薄暗い、絶望の部屋。
弱いものを完全に優位に立って虐めるのが大好きだった。助けを懇願する人間が,諦めた瞬間の絶望する目を見るのが好きだ。生き物はみんな必死に生きようとする。どんな虫ケラでも生きようとするのだ。その命を思うままに弄ぶ。生殺与奪は自分の手の中にある、とその瞬間思わず射精してしまう。震えるほど楽しいのだ。
子供の頃は小動物を見つけてはなぶり殺しにした。
「おい、陸、面白いもの見せてやるよ。
ウチの事務所に来い。」
(来たな。準備は出来ている。)
倭塾(やまとじゅく)のまとめ役、タケルに一声かけた。
堂島一家が構えている事務所の場所は事前に調べてあった。
一応、タケルたちにはチャカを持たせているが他の事は任せている。
(まずは子供たちの救助が最初だ。
三人だって言ってたな。)
陸は一人、丸腰で事務所に到着した。愛車のレクサスRX500hで乗りつけた。足回りは万全だ。
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