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第40話 顧客

「客はいつ来るんだ?」 「ああ、明日かな。政治家なんか忙しがって、 何もやらねぇ。」 「名簿とか無いの?」 「なんでだよ。なんか嗅ぎ回ってんのか。 おまえ、ふざけんなよ。」  とりあえず広い部屋に連れて来た。子供たちはおとなしく従順だ。 「何か食べたいものはないか? 子供は甘いものが好きだろ。」  部屋住みの若いもんに買い物を頼んだ。 子供の好きそうなファストフードとケーキ。 「おじさん。」 日本人の子供が小さな声で聞いて来た。 「おウチに帰りたい。ボク、ママに叱られる。」 「そうだな、でももう少し待っててね。 そっちの坊主はおとなしいな。 日本語が出来ないのか?」 「シャッチョサン、アイシテマス。」 「そういう言葉だけ覚えたのか?」  孝平が来た。 「どうだ、味見するかね?」 「この子は親が探してるんじゃねえのか?」  日本人のお坊ちゃんが泣き出した。 ドカッ!そばのテーブルを孝平が蹴っ飛ばして、すごい音で黙らせた。 「一晩中一緒にいるのも大変だな。 俺もここに泊まらせてもらうわ。 若いもんに布団持って来させて。」  リビングのソファとか、家具を片付けた。 「無駄にいい家具置いてんな。邪魔だ。」 「今夜はおじちゃんと遊ぼう。ゲームとかねぇの?」  若いもんが、なぜか陸の言う事をよく聞いてくれる。みんな孝平の下ではうんざりしていたようだ。 「用意させますか、ゲームとかオモチャとか。」 「みんな何して遊ぶ?」  外にうるさいバイクの音がしている。 「ウルセェな。」 孝平がガラッとテラスの掃き出し窓を開けると、塀の向こうに暴走族が集まり始めていた。 「なんだ、なんだ?」 (あ、タケルたちだ。面白い事になって来た。)  シャコタンのトレノが近づいて来た。 ミュージックホーンが、「ゴッドファーザー愛のテーマ」を鳴らしている。 「懐かしいなぁ。ちょっと古すぎやしねぇ?」  見渡す限り改造した族車だった。一斉にこちらをライトで照らしている。改造してまぶしくなったライトで、部屋の中まで目が眩む。

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