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第41話 救出
「なんだぁ!カチコミか?陸は知ってたのか?」
堂島孝平の事務所には、今は数人の組員しかいなかった。
「孝平さん、いつもこんなに手薄なんですか?」
「ああ、この頃若いやつが、いつかないんだよ。
根性無しばかりだ。」
若いもんから聞いていた。すぐに頭に血が上る
孝平は,気に入らないことがあると、鉄拳制裁だ、と喚くそうだ。
組に慣れない若い奴を地下で拷問して、なぶり殺しにしたこともあると言う。
暴力で抑えても人はついて来ない。
殺しをさせられた若いもんは、死体の処理もさせられた。この頃のやり方は、溶かしてアスファルトにする事だった。
「みんな同罪だ。一同連座で死刑だよ。
極道は一蓮托生だ。」
いつも恐怖で縛って組を続けて来た。逃げ出す奴には凄惨な仕置きが待っていた。
「死んじまったら仕方ねえ。根性なしって事だ。
簡単にくたぱるのは組の代紋背負って恥ずかしいだろ。」
自分で死なせておいて、酷い言い方に誰も親分と慕う者はいなくなった。
金の匂いのするところにハイエナだけが残っていた。
現会長、堂島鉄平から派遣されて組員になっている者もいる。出向社員みたいなものだ。彼らは気の毒だった。
「チクるわけにはいかねぇ。
でも会長の鉄平さんの耳に入れておきたい。
俺,自首するよ。」
殺人の罪を償うと言うのだ。
「死刑でも、構わない。
死なせたあいつにあの世で詫びるよ。」
水面下でそんな動きがある事を知らないで、陸
は動いてしまった。
そんな気を許せる組員に小声で
「タケルが来たから子供たちを俺の車に乗せて外に出てくれ。運転できるな?」
「はい、親分はチャカ持ってますから、
陸さんも気をつけて。」
孝平が来た。
「暴走族がうるせえな。陸の知り合いか?」
「ああ、ちょっとドライブにガキたちを
連れて行こうかと思ってね。」
「なんだと?明日は客が来るんだよ。
なに寝ぼけた事言ってんだよ。ああ?」
「ヤバい仕事は会長が禁じてますよ。
特にガキを使ったシノギは重罪だ。
俺、今まで、孝平さんを庇って来たけど
この頃ちょっとやり過ぎでしょう。」
「なんだと!もうルートは出来てんだよ。」
「児童ポルノの、ですか?」
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