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第48話 子供たち

 密入国して来た子供たちは全部で6人。 国を聞くと、ベトナムとタイとフィリピンだと言う。住み込みのダンサーたちがいて助かった。  言葉が通じる。先に来ていた4人は、組の子供たちとネズミが仕切るあの夢の王国に遊びに行ったようだ。その話で持ちきりだった。  後から合流した子供のうち、一人は重傷を負って安静にしている。みんな心と身体に傷を負っているのだ。  陸は冷静でいられない自分を持て余す。 「さて、この先どうするかな?」  本家から打診があった。 「陸よ、何か、抱え込んでるんだろ?」  会長の堂島鉄平からの直接のお伺いだった。 「会長、孝平の伯父貴はどうしてます?」 「おまえがあいつの家を壊したんだろ。 行くところがねぇって俺の所にいるよ。 おまえ、ヤバいもん持ってったんだってな。」 (あの、顧客名簿だ。かなりヤバいもんだった。 政財界の大物の名前がズラリと載っていた。)  直接会長が陸の店に来た。 「ガキ抱えてんだろ。 コッチで国に帰してやるよ。」 「帰る所があるんですか? 帰ったらまた、大人に働かされるんでしょ。」 「警察に保護させても強制送還で帰されて同じだよ。あの子供たちに未来は無い。」 「そんな!」  陸はマンションでダンサーたちと打ち解けて楽しそうなガキらの事を思った。 「裏ルートで帰してやった方がいいだろ。」  他に方法は無いのか? 子供たちが不憫だ。親の無い子の気持ちは陸もよく知っている。 「秋吉って知ってますか?」 「名前は聞いた事があるな。そいつが親玉か?」  陸は秋吉が零士と因縁があるのを知らない。 秋吉は昔、医者だった。医師免許を剥奪される前、零士の主治医になって偽の症状をでっち上げ、零士を縛った過去がある。  同じ大学のものなら秋吉教授を知らない者は、いない。 「ガキを斡旋してる奴だな。名前が割れている。」 「どこにいるんでしょう? そいつは悪知恵が働くんですよ。 コネがすごい。人の心を操る。 精神科の医者だった。」 「そいつが黒幕だな。」  子供たちはしばらく寮になっているマンションでダンサーたちと暮らす事になった。懐いているのだ。  みんな10才に満たない。親が恋しい年頃だ。 国を離れて寂しがっていたダンサーたちの元に来た。非常に可愛がっている。  重傷だったベトナムの子供も回復して来た。

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