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第52話 簡単に解決はしない

 相変わらず、秋吉は捕まらない。国際手配されている。要注意人物なのだ。  あの密入国の子供たちは、在留資格をもらって、あのマンションで暮らしている。  独身のダンサーたちが、身元を引き受けている。国に帰る者、ずっと日本に残る者。  少しずつ顔ぶれが変わっても、みんな子供たちを気にかけていた。中にはゲイのカップルもいて、子供を養子にしたいという。  手続きは煩雑で高い壁があるが、ここはファミリーだ。日頃から日本に馴染んで暮らしているダンサーたちは近所の人とも仲良しだ。 「陸、嬉しそうだね。」 「ああ、流星とも長い付き合いになりそうだな。 「死ぬまで付き合うよ。」  子供の成長は早い。そんな事があったが、 もう太郎は12才になった。6年生。 「もう大人じゃん、俺。」  警察は中々追及出来ないで真相に迫れない。 「何か上の方で強い力が働いている。 もう少し真相に迫れると思ったんだけどな。」  みんな酷い事があったのは知っている。 「児童ポルノ、なんて絶対に許せない。」  強い意志で臨んでも、別の力で外部から潰される。関わった警察官は、諦めと無力感が拭えない。  吉田もたまに顔を出して、状況を聞いてみる。 不完全燃焼の感が否めない。 「秋吉ってのを見つければ何かわかるかもしれないが。」  美弦が太郎を見て、感慨深い。 「デカくなったな。」 「うん、168センチ。」 「6年生だろ、デカいな。」 「早く180センチになりたいんだ。」  徹司が180センチだから、越えたいらしい。 見るたびに可愛くなる。  美弦は太郎が眩しい。こんなカッコいい子供を他に知らない。 「美弦はホントに太郎のオカンだな。 婚期を逃すぞ。」  徹司の言葉に胸がチクッとする。 「俺は誰とも結婚なんかしないよ。 徹ちゃんこそ再婚しないの? 葵ちゃんのママとか。」 「やめてくれよ、あの人は苦手なんだよ。」 太郎と同じ小学校でずっと一緒の葵ちゃん。合気道を始めた娘を使って母親が徹司に猛アタックしてくる。離婚してシングルなのだ。  太郎も、女性不信になった原因の葵ちゃんが苦手だ。相変わらず女子とは口を聞かない。  カッコよくなった太郎は女子の間でモテモテなのに。 「俺、女は嫌いだ。なんか臭いんだ。」 「おまえ、今世界中の女を敵に回したぞ。」 「いいよ、俺,美弦と結婚する。」 「俺はおまえのオカンだぞ。勘弁してくれ。」  何かと身の回りの世話をしてくれる美弦に心を許している。  美弦はため息をつく。太郎の成長が眩しい。 ずっと徹司を思って来たのに、この頃は太郎が眩しくてツラい。 (いつか、彼女を連れて来るんだろう。 愛情深く大切に愛するのだろう。)  わかっていても胸がチクチクする。 (太郎が結婚するなんて言ったら、俺、泣くな。 まるで娘を嫁に出すオカンの心境だ。) 「美弦、一緒にお風呂に入ろう!」 「あ?そろそろ一人で入れよ。」 「いつも一緒に入るじゃん。」 「ゆっくり入りたいんだよ。」 「じゃあ、徹司と入ろう。」  シャツを脱ぎながら歩いて行く背中が眩しい。 綺麗な肩甲骨。綺麗な男になって行く。

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