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第62話 冷たい眼差し・陸の仕事

 仕事机の上に書類が溜まっている。珍しく陸はパソコンを使って仕事をしている。いつもは流星に丸投げだが。 「あーあ、面倒だ。決済が必要な書類が溜まって行く。もっと面白い仕事、くれよ。」  陸は身体を動かす仕事がしたい。ヤバい仕事とか。 「面倒な事なら山ほどありますよ。 また、孝平さんが会いたいって言ってますよ。」 「なに?あの人の用事は碌なことないからなぁ。」  登龍会会長の兄、出来損ないの堂島孝平。無視は出来ない。あの事件の不始末で引退を言い渡されたはずだ。  陸に何の用があるんだろう。 「嫌な予感しかしねぇ。」  この伯父貴は組にとってもお荷物だ。気軽に外をうろつくな、と会長にも言われている。 「退屈してんだよ。 遊びに行きたいから資金を用意しろよ。」 (なんだ、金の無心か?) 「どのくらい必要ですか」 「まあ、一本、いや二本だな。」  200万出せと言っているのだ。 「何に使うんですか?」 「野暮なことは言うなよ。 銀座でお姉ちゃんと遊んで、いい酒飲むだけだ。」 (このジジィ、大概にしろよ。) 「流星、金庫開けて。」 これ見よがしに、でかい金庫の扉を開ける。 「おお、束が唸ってんじゃねえか。 二つと言わず、三つ四つ出せや。」 「伯父貴、こっちも遊んでて、金が入るわけじゃねぇ。勘弁してくれ。  月末の決済で銀行通せねぇ金が動くんだよ。 俺も遊んでるわけじゃねえんでね。」  堂島孝平を見る陸の目は、冷酷極まりない。 その目で殺す、と言われている。  ブルッと肩を震わせて 「おまえも、でかい口聞くようになったな。 相変わらず、東南アジアから,ダンサー連れて来て働かせてるんだろ?  この前の名簿、コピー取ったか? アレをネタにいくらでも金出す議員がいるだろ。」 「アレは全部警察に渡したよ。コピーは無い。 伯父貴、会長に報告しねぇと。」 「テメェ、安藤の名前出して看板背負ってんだろ。俺にそんな口聞いていいのか?」 「脅しは効きませんよ。もう親は鬼籍に入ってる。死人に石投げるんですか?」 「おうっ、覚えておけよ。 俺は堂島鉄平の兄貴だぞ。」

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