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第64話 ゲイの両親
陸が引き取られたのは、ヤクザでゲイの親の元、だった。煩雑な手続きを何とか乗り越えて陸は、安藤甲斐の養子になった。手続き上、母親役の稔の弟になった。
甲斐と稔は夫婦には、なれない。日本の法律だ。それでも仲のいい二人は本当の親のように、大切に陸を育ててくれた。
美しい稔は、いつも女装をしていたから、まわりはみんな、自然に両親と認めてくれた。
学校でも、違和感はなかった
陸の母,稔を
「オカマ,オカマ。」
と言った同級生を叩きのめした事があった。
空手で頭角を現していた陸にやられて相手は大怪我をした。ヤクザの子,と言うだけで、一方的に陸が悪い、とされた。
世の中の理不尽,を知った。
「俺が母ちゃんを守るから。」
いつも優しく微笑んでいる稔を心から尊敬した。甲斐と稔の愛は美しかった。
「父ちゃんと母ちゃんはほんと,仲がいいね。
俺もそう言う相手見つけたいよ。」
陸が好きになったのは、唯一空手で負けた吉田だった。高校時代。男同士、吉田はノンケだった。陸も自覚はなかった。
そして、今まで長い付き合いになった。
吉田は探偵業だ。裏稼業をよく知っている。しかも元警察官。良くも悪くも陸の理解者だ。
母の事を思うと、流星に甘えたくなる。
「なあ、おまえは男が好きだったのか?」
「いや、普通に女と付き合うもんだ、と思ってたよ。由香、見たでしょ。」
元カノの由香が店に来たことがある。
ホストクラブだから客はほぼ女性だ。女にモテる。モテなくちゃ仕事にならない。
今、流星は事務仕事がメーンだが、以前のメンズストリップのファンが未だに店に来る。
今はアレックスというイケメンフランス人がストリップの担当だ。
「アレックスは浮いた噂がねぇな。」
「あいつは零士一筋だ、って言ってますよ。
たまにハッテン場に行くみたいですけど。」
親の介護には悲しい思い出がある。
今は亡き父,甲斐が末期癌で闘病していた時だった。
「手術の同意書をもらいたいのですが?
配偶者はどちらに? 」
稔は普通に妻に見えた。でも配偶者と認められない。未成年の陸も同意書が何かわからなかった。
有能な弁護士を立てて、血の繋がりのない堂島鉄平が何とか、同意書の作成をした。強面のヤクザが脅して書かせた物では無い。時間がかかってしまった。
細かいことで家族が問われる。
「ずっと一緒だったのに、最後だって一緒にいたかったよ。」
やっと病室に入る許可が出た。
「許可って?」
養子縁組していたから、許可が出た。見るからに女装している稔は、確認作業に時間がかかった。
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