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第66話 美少年
太郎は中学2年になった。背が伸びた。
175センチ。もう十分大人の身長だ。剣道部で頭を坊主にした。面を付けるのに邪魔だったから。
「片岡ってカッコいいね。」
「タレントのGみたいなロン毛も好きだけど、 今時の坊主もいいよね。」
「ヤンキーっぽくない?」
「ヤンキーの坊主は、ピアスやタトゥー入れてて髭があるんだよ。眉毛剃ってて。」
「太郎はさわやか。スポーツマンって感じでいいんだ。」
中2にもなると、女子も中々うるさい。男の好みがハッキリしてくる。
太郎はモテ期のようだ。3年生の大人っぽい女子から手紙をもらった。
ーキミ、可愛いね。今度,私の部屋においで。
そんな内容だった。
(男に可愛いね、は、ないだろ。)
部活が終わるとまた、陸の店のそばをウロウロする。駐車場にレクサスが停まっていると、嬉しくて出てくるのを待ってしまう。
徹司に叱られるから店の中には入らない。
外をうろつくだけだ。暗くなったら諦めて家に帰る。
(また、今日も会えなかったな。)
自転車を押して駐車場を出ようとすると、ビルから人が出てきた。ここは裏口だ。
「よお、太郎じゃないか。
久しぶりだねぇ。」
「陸、俺、毎日ここに来てたよ。」
肩を抱かれて陸の顔が見られない。大きな手で頭をゴシゴシ撫で回される。
「気持ちいいなぁ、おまえの頭。」
「部活で決められてんだ。」
「顔を見せてみろ。」
恥ずかしくて俯くと顎を持たれて真っ直ぐ見つめられた。
「いい男になったな。」
「今日は流星は?」
「ああ、店の中にいるよ。お客さんに捕まってる。常連が来てるんだ。流星のファン。」
手持ち無沙汰なのか、ブラブラと出てきたという。
「ドライブ、行くか?」
太郎は嬉しくて大きく頷いた。
「あ、車のキー、事務所だ。
ちょっと待ってろ。」
陸は地下に降りて行った。
若い奴が,車を乗り付けてきた。
チャラいアルファード。サイドのスライドドアから3人ほど出てきて太郎を力づくで車に乗せた。
いきなり口を押さえられて気を失った。
太郎を引き摺り込んで車は発進した。
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