68 / 198
第68話 陸の声
スマホから聞こえる陸の声に、太郎はすごく嬉しかった。
タトゥーの半グレが
「おい、何やってんだよ。こっち寄越せ。」
スマホを取り上げられた。
「おまえ、誰だよ?」
タトゥー野郎が怒鳴ってる。
「おい、小僧。おまえの兄貴だってよ。
こっち来いって言え。」
(陸はここをわかってる。俺のスマホはGPSに繋がってる。徹司が付けたんだ。)
「たぶん来るよ。兄貴はすごいんだ。」
「おう、金持って来いって言えよ。
なんか耳とか見せるか?」
「耳って?」
「誘拐したのを証明するのに切り落として、送りつけるのよ。映画とかでやってんだろ。」
「やめとけ、おまえの兄貴、金持ちか?
100万円。とりあえず100万円持って来いって言って見ろよ。」
ババババァッ!
外にバイクと車の音が数台、集まってきたようだ。
「あ、アルファードが止まってますぜ。」
先行してきたバイクから話し声が聞こえる。
タトゥー野郎が驚いている。
「何だよ。やけに早えーな。
今しゃべってたのに、もう来たのかよ。」
ヤードのプレハブ小屋に転がされていた太郎は,早くからスマホが追跡してくれた事に気づいていた。
数台の車とレクサスから男たちが降りてきた。
小屋の扉を蹴り開ける。
知ってる顔だ。『ジュネ』の黒服だ。人相が悪くてホストではない。それなりに強面で店の警護を担っている。
「おい、ここの代表はどいつだ?」
「おうおう、いきなり何だよ。
金持ってきたか?おまえ、こいつの何なん?
兄貴だって?」
「ああ、入り口壊れたぞ。
ちゃっちい所に住んでんな。」
「こちらの方は、登龍会直系若頭、安藤組、安藤陸さんだ。テメェらチンピラでも聞いた事、有んだろ?」
髪をビシッと後ろに撫で付けてオールバックの陸は鋭い眼差しが惚れ惚れする男ぶりだった。
貫禄負けか、半グレたちはおとなしくなった。
「おい、刺青坊主とそこのデブ、穴掘れよ。」
必死に穴を掘る奴らの横に車に積んであったセメントの袋を置いた。
「穴にセメントを入れてバケツに水を汲んで来い。セメントと水をこねるんだよ。」
「おまえらが入る穴だからな。」
ともだちにシェアしよう!

