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第69話 ヤクザのやり方
太郎を拉致って来た半グレたちは、ガタガタ震えてスコップも上手く持てない。
「勘弁してください。知らなかったんです。
お宅の店がトッポい奴らの噂になってて。
本物のヤクザさんだとは知らなかったんですよ。」
陸は冷たく笑って
「もうちょっとちゃんと情報収集しなさいよ。
ウチの身内に何したかったの?
場合によっちゃタダじゃ済まないよ。」
掘った穴にセメントを流し込んで
「おまえら、ここに座れ。
膝から下をセメントに突っ込んで
おとなしく座れ。すぐ固まって来るから。
ラクに座って。動けなくなるから。
ホントは顎まで埋めるんだけど、今日はこの程度で勘弁してやるよ。」
4人とも膝から下を固められておとなしく座っている。カッコつけた流行りの服も台無しだ。
「何だか熱いです。」
「ああ、セメントは熱持つからね。」
「ドラム缶に生きながら入れられるのも、結構死ぬまで時間がかかるんだよ。やってみるか?」
「ひーーっ助けて!」
「太郎、何発殴られた?」
「俺、そんなに酷い事されてないよ。
勘弁してあげて。」
太郎は、残酷なことを平気で言う陸が信じられない思いだ。
(こんなに怖い人なんだ。)
でも痺れるような色気がすごい。この状況に混乱の極みだ。ヤクザのテキパキとした作業に驚く。手慣れている。人殺しが⁈
陸は太郎がいなくなってすぐにGPSで追跡した。カーナビと連動しているから場所はすぐに特定出来た。意外と近場の寂れた分譲地。
家はほとんど建っていない。雑草の繁る山の中のヤード。錆びた廃車が山積みになっている場所だった。
陸の一声で黒服をやっている組員たちが召集をかけた。
バイクと車。得意の布陣だ。
「おまえら、何者?最後に聞いてやるよ。」
「最後って?勘弁してくださいよ。」
「ウチの若頭の大事な人を拐ったんだから、それなりの落とし前は必要だろ。」
奴らの言い訳はこうだ。
「近頃流行ってる、ボーイズバーなんていうのがある。目障りだ。暴れて来い。」
そう言われて来てみたら,弱そうな中坊がいたので関係者だろう、と拐った、と言う。
「俺たちもそんなおおごとにはしたくなかったからこちらの坊ちゃんに来てもらって、迎えの人に手数料をいくらか頂ければ、なんて思っただけですよ。」
「なんか、固まって来て足が窮屈です。」
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