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第74話 20才の差

 太郎は、陸の事が頭から離れない。 年の差は20才。 「別に問題じゃない。 俺が18才になれば解決する事だ。 早く18才になりたい。車の免許も欲しいし。」 「太郎は、大人になったら何になるんだ?」 聞かれても特別何もない。 内心、立派な極道、とか思ってしまう。  陸の片腕になっていつもそばにいたい。 流星の位置が憧れだ。  あの拉致事件の次の日、陸たちはあのヤードに行った。放っておくと死んでしまうだろう。 「ヒィーッ、助けてくださいよ。」 「臭えな、小便垂れ流しかよ。」 立ち上がれないのだ。みんなグッタリしている。  若いもんが電気ドリルとチェーンソーを用意して、固まったセメントを砕いた。 「足までぶっ壊さないでくださいよ。」  あの入れ墨坊主が懇願している。ロン毛デブは蒼ざめて朦朧としている。  イキってたヤンキーと運転手も意気消沈の様子だった。長い時間同じ姿勢で動けなかったから、みんな一晩で歩けなくなっている。 「マジでこんな目に合うとは思わなかった。」  陸がデブの髪の毛を掴んで転がした。 「テメェらのバックを知りたい。 サッサと吐いちまいな。」  入れ墨坊主は髪が短いことにホッとした。 髪を掴まれないで済む。 「テメェはそのタトゥーいらないだろう。 消してやるよ。」  ガスバーナーに点火した。 「ヒェーッ、勘弁してくれ。」 「トライバル柄は、ルーペで焼くってのもあるぜ。太陽が出たら、な。黒い所がよく焼けるんだってよ。」  若いもんは用意周到だ。デカい虫メガネを手に持っている。 「陸さん、よく次々と思い付きますね。」  チラッと太郎の顔が浮かんだ。 (あいつを泣かせてはいけない。 俺を怖がるようになったらイヤだ。)  逡巡していたら舐められるが。 「チャイマですよ。C国人。 俺らがゲーセンでたむろしてたら、近づいて来て、店に嫌がらせしろって、金くれたんで。 誰か拐ってもいいぞって言ってた。」 「どこの奴だ?」 「新宿の李って知ってますか?」  陸の蹴りが飛ぶ。坊主が鼻血を出した。 「李なんてチャイマ、腐るほどいるんだよ。 舐めてんのか?どこの李だか詳しく調べて来な。」  ご丁寧に停まっているアルファードのタイヤ全部にチャカをぶち込んでパンクさせた。 「おまえら、歩いて帰れ。」  足が萎えている奴らに過酷な仕打ちだった。

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