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第79話 輩たち

 地下から上がって行った。 駐車場に車高を限界まで上げた派手な改造車が停まっていて、例の輩たちがたむろしていた。 「どうも。連絡先がわからなくて直接来ちゃいました。」  あの入れ墨坊主が話しかけて来た。 (このヤー公、不用心だな。丸腰であのガキ連れてノコノコ出て来やがった。)  挨拶もなしにいきなり飛びかかって来た。 陸がK空手の有段者だと知らないようだ。ケンカ空手のために昇段試験を辞退した実績を知らないらしい。  一撃必殺。フルコンタクトで鍛えた無駄のない動きで坊主をねじ伏せた。  あのロン毛デブが、太郎を捕まえた、と思った瞬間ひっくり返った。太郎も合気道の使い手だ。 油断していたデブは見事に返されて地面に叩きつけられた。 「重たい人はダメージも大きいんだよ。 自分の重さで転ぶんだ。」 「太郎、すごいな。この技、見た事あるよ。 そうだ、零士だ。」 「うん、零士は俺の兄弟子(あにでし)だ。 アレックスも兄弟子だよ。」 陸は嬉しそうに太郎の肩を抱いて 「兄弟がたくさんいるなぁ。頼もしいよ。」  武器を持たなくても無敵の陸に、半グレの輩たちはビビりまくっている。  転がってる坊主を足で蹴り起こし 「いい度胸じゃねぇか。 素手で俺とやりあおうなんて、な。」 「ひぇー、勘弁してください。 ネタ持って来たんで。」 「で、どこのチャイマだって? 糸引いてんのはどこの誰?」  半グレたちの情報は、厄介なものだった。 港の華僑絡みのようだ。 「華僑とはずっと仲良くやって来ただろう? 港の李なら友達だ。  こっちは登龍会だよ。港はM会が仕切りだろう。何かあんのか?」 「密輸ですよ。コンテナ。 中身はヤクと銃器のようです。 俺たちは何も知らないんで。 これ以上探りを入れたら命が無くなります。 勘弁してください。」  隙あらば襲いかかって来るのに、みっともなく命乞いをする、情けない奴らだ。  運転手の男が太郎を狙って飛びついて来た。陸が何か手渡した。 「特殊警棒だ。一振りで長くなる。」  太郎は一振りして長くなった警棒で、運転手を叩きのめした。 「さすが、剣道部。」 「チョンチョーン、ですよ。」 「おまえ、大人になったら俺のボディガードになってくれ。楽しみだなぁ。」  頼りになる太郎が眩しく見える。  港の李星輝とは盟友だった。ずっと華僑とはうまくやって来た。  陸は,事が厄介だと腹を括った。動物の勘だった。 「李星輝が俺らに何か仕掛けてくる事は無いと思う。裏に何かあるな。

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