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第81話 登龍会
陸が組の幹部から呼び出された。
本部に顔を出すと会長の堂島鉄平が直々に話がある、と奥に通された。
「会長、何か問題ですか?」
「ああ、面倒ごとだよ。
ウチの組は地味に暴対法も守ってやって来たんだ。シノギも厳しくなってアガリは減る一方だ。
違法行為でもやらなきゃ組が続けられないだろう、ってカマかけられた。」
「警察ですか?」
「ああ、港湾警察からだった。
華僑とは仲良くやってんだろ?
ウチはあんまり、関わってねぇよな。」
「ああ、この所、李を名乗る奴が、半グレを使ってカツアゲとかやってるって港の李星輝が困ってました。」
会長の耳にまで入っているのか。
「この前の児童ポルノの顧客名簿の一件はどうなったんです?」
「ああ、警察に全部渡した。
持ってかれたって言う方が合ってるな。無理やりだ。奴らは何も教えてくれない。
揉み消されたな。顧客に上層部がいたんだよ。」
李星輝が危惧していたのは、ヤクと銃器と、もう一つ。子供の誘拐だった。
陸も太郎が小学校の時、誘拐犯を捕まえる囮になったと聞いた事がある。無事だったが、陸は警察が許せないと思った。
「全く酷い話だ。臓器売買が絡んでいるらしい。
港は関係ない、と思ってた。
臓器は新鮮なうちにジェット機で運ばれるから。でも、この頃は生きたまま連れて行くってよ。」
「極道が言う事じゃねえけど、人の道を外れている。藤尾さんから直々の依頼だ。
少し調べてくれ、って。」
(藤尾集蔵が出て来たのか。
これは半端な事じゃねぇな。)
陸は身の引き締まる思いだった。藤尾さんは日本の裏社会を束ねる影のフィクサーだ。
世襲ではない堂島鉄平が会長になったのも
鉄平に惚れ込んだ藤尾さんの意向だった。
滅多にその姿を見る事は出来ない。
「それから、陸、謝らなくちゃならない事がある。私のバカな兄が、寝た子を起こすような事をした。
ハナって女を店に連れて行ったんだろ。
知ってるだろう、おまえの母親だ。懲役を終えて10年。おまえには絶対に会わせたくなかった。
あの女はテメェで殺した娘の名前を語ってホステスとかやってるって、孝平がほじくり出して来た。スマン、謝る。この通りだ。」
会長は平身低頭だ。
「親父、手を上げてください。」
「女がとんでもない事を言い出したら、攫って埋めるから。」
「ご存知だったんですね。
俺も二度と会いたくはないんです。」
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