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第83話 親
陸は親を目の前に連れて来られたら、もう許し難い思いに焼き切れそうだ。
誰に怒りをぶつけているのか。孝平伯父貴が許せない。
母親は、気のふれたバイタとしか思えない。
孝平伯父貴を色仕掛けで誑しこんだ。
そして陸に近づいた。会いたくも無いはずだ。自分の罪の子、だ。
会えば古傷を抉られると思うのはマトモな人間だけか?
そんな年になっても男の相手をするなんて。
「これだから、女は嫌いなんだ。
太郎を抱きたい。もう十分大人だ。でもダメだ。俺にはその権利がない。
汚れた極道なんだ。」
陸にしては珍しく自省的になっている。
「陸、ここにいたのか。
なんかこの頃、思い悩んでるね。
俺でよかったら話してみて。」
流星が首に抱きついて,慰めてくれる。
ソファに押し倒して強引にキスを奪う。
「流星、ずっと俺のそばにいてくれ。」
陸は時々、弱気になる。弱い顔を見せるのは流星の前でだけ。零士も陸のそんな顔は知らない。
ひととき、零士に夢中になっていた。
思い通りにならない所が魅力的に見えた。
訳ありで世にも美しい零士は、一筋縄では行かない、と諦めた過去がある。
零士は陸を組み敷いて、受け、にさせた唯一無二の男。人の縁は不思議だ。
流星は借金のかたに無理やり犯した男だったが今では誰よりも信頼している。
「人の心ってのは不思議だなぁ。」
「いいよ、何も言わないで。
大事な人が出来たんだね、俺より。」
察しがいい。初めからだ。気の利く男。
その気配りに甘えて来た。
「俺の親が出て来たんだよ。俺は許せねぇ。
妹を殺したんだ。俺も死ぬところだった。俺たちをいらないって言ったんだよ。」
流星に抱きつく。
「俺は怖かった。ガキの頃から怖くて仕方なかった。暗いのがいやだ。灯を消さないで。」
流星は陸の肩を抱いて、
「いつも、暗がりを怖がってたね。
一人で部屋にいるのも。強い陸が。敵なしなのに。陸、大丈夫だよ。そばにいるよ。」
「ああ、母親がハナを蹴ったんだ。2才の妹。ろくに飯も食ってなかったから2才でも6キロしかなかったんだ。
警官が来て,顎が砕けてるって言った。」
これが俺の原風景だ。流星の胸で泣き崩れる陸。愛しさが溢れる。
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