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第85話 チャイナルート
「俺の独断でガキ預かってるんです。
違法ではないんですが。
入管の方で、強制送還させるって言うんです。
あの顧客名簿に載ってた奴が買おうとして密入国させたガキなんで。
公にしたら困るのは誰なんでしょうね。
チャイナルートで送り返せって言われてるんですが。中国人じゃないガキもいるんで。」
会長は頭を抱えた。
「あのガキの買い手はもう決まっていたんだ。
変態がいるんだよ。
性交渉のために子供が欲しいってやつら。
反吐が出る。」
入国管理法違反で強制送還させられたら、どこに帰されるのか。ベトナムやタイ、フィリピンの子供たちだ。まとめてどこへ帰るのか?
いま暮らしている場所に馴染んでいる。
親に売られた子供たちが親元に帰れる保証は無い。
陸は、子供たちと従業員の暮らすマンションに行ってみた。子供たちは,ウォーキングダンサーに懐いて落ち着いて暮らしている。
「陸、こんにちは。」
陸の持って行ったお菓子を喜んでくれた。来た頃のようには、もうガツガツしていない。
「陸、僕は本読めます。」
幼児用の絵本を持って来て、読んでくれる。
「みんな、帰りたいか?」
グエンが通訳してくれる。
「帰りたいって言う子は少ないです。」
帰れば性接待という名の仕事が待っている。
「今の状態は不法入国なんです。
陸、何とかならないか?」
国際問題に詳しい、組に出入りする弁護士に相談した。組の主だった仲間が集まっている。
「知っていて匿ってるとなると、やはり不法滞在をさせていると見做されますね。
こちらのお仕事がいわゆる反社ですから。」
「こういうのはどうだ?
あの名簿に載っていた大臣に頼むんだよ。」
陸が言い出した。
「俺、あの名簿パラパラ捲って見て、目立つ名前覚えてるんだよ。忘れるわけない。
有名な保守系の重鎮だ。」
「そいつを脅すんですか?」
「ま、そういう事。」
「誰?」
「某国政政党の外務大臣。」
「あ、岩橋剛助⁈」
「あいつはとんでもない変態だ。
悪行を懲らしめないと。
小児性愛が大好きなんだって。」
「それとサディストだと聞いたよ。」
反社のネットワークに情報が入る。陸は名簿の名前を頭に叩き込んでいた。国会議員とか、コメンテーターとか、学者とか。
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