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第96話 媚中

 秋吉は突然登場したアレックスに振り回されている。 「僕のショーのお相手になってくれる?」  店内の照明が落とされた。真っ暗になったステージに連れて行かれる。ベッドがある。  背が高くてしっかりした骨格のアレックスと、貧弱な秋吉がベッドにいる。  スポットライトが二人を照らす。浮かび上がるシルエットは一つはかっこいいが、もう一つは猫背で貧弱だ。アレックスに脱がされて客席から失笑を買っている。  優雅に踊るバレエの心得のあるアレックスと、貧弱な老人の秋吉。  ムード音楽に乗せられて右往左往している。 手を引いて席まで戻ってきた。 「おじいちゃん、あんまりオイタしないようにね。メルシーボークー。」 「先生は綺麗な男が好きでしたよね。 無いものねだり、ですか?」  零士に嫌味を言われている。まさに老害の極みだった。 「でも、先生、とんでもない犯罪に関わってるんですよね。」 「何だよ、何を知ってるんだよ。」  陸が知ってることだけでも ・児童ポルノ(強姦罪含む。) ・誘拐、誘拐未遂 ・臓器売買の疑い  関わっている犯罪は多い。胸の悪くなるような犯罪ばかりだ。秋吉一人で出来るわけもない。 「先生、バック誰なんだ。組織があるんだろう。」 「追求すると国際問題になるよ。言えないね。」 「絶対に暴いて見せる。誰がバックに付いてるか。」 「先生はせいぜい長生きしろよ。 生きてるだけで後悔させてやる。」 「何の当ても勝算もなく、ノコノコと一人で来るわけないもんな。何か強いバックがいるんだろう。」  秋吉をこのまま黙って帰すのも腹立たしいが、しばらく泳がせてみる事にした。  秋吉は会計を、有効なアメックスのプラチナカードで払った。アリペイの漢字のマークがついている。アリペイも使えるって、中国か。  秋吉はいつも,嫌に金を持っている。 「先生、今はどちらにお住まいですか?」 「キミも知ってるあのタワマンは今は使ってないのだよ。服役中に追い出された。キミのおかげで信用が無くなった。  今は有る人の下で雇われているんだ。」 「あの名簿がないとお困りでは?」 「ああ、大丈夫。法律なんてどうにでもなるよ。」 「とんでもねえな。」

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