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第99話 大人になる

 砂浜に座って海を見ていた。小さい頃からこの辺りで育ったから、海は珍しくないのに、今日は違う感じがする。  陸の肩にもたれかかって時々キスをもらう。 身長は伸びたから、陸と並んでも遜色ないと思う。 「俺、身長はもう陸に釣り合うでしょ。」 「ああ、痩せっぽちだけどな。少しは筋肉付いてんな。」  肩を抱き寄せられて陸の手がのびる。 「俺、もう大人だよね。」 「何が欲しいんだ?」 「うん、大人のしるし。」 「18才になったら、って言ってたあれか?」  太郎は顔を赤くした。 「なんで18才なの?」 「そうだな、この国の法律だ。」  陸も自分の言ってる事に矛盾を感じた。 (極道が法律、だって?)  奪ってしまえはいいんだよ。 心の中で悪魔が囁く。天使も一緒に頷いている。 (なんだ、この妄想は?) 「陸、何か言った?」 (中学生か。やりたい年頃だな。 兄貴として教えてやるならいいだろう。 本当に挿入しなければ。)  陸は何を言い訳しているのか、自分らしくない事に笑った。 「太郎、大人になるか?」 「え?」  勢いよく立ち上がって砂を払っている陸に手を取られて引き上げられた。 「太郎を大人にしてやろう。」  車に乗ってエンジンをかけた。  「腹,減ってないか? 太郎は何が好きなんだ?」 「うん、どこへ行くの?」 「美味い魚を食べよう。」  海岸の漁師飯の店に入った。 「嫌いなものはないか?」 「うん、何でも大丈夫。」  すごく美味しい海鮮丼を食べた。 「酒とか飲めるといいんだが。 車だし、未成年だし。おまえ学校の制服だな。」 「どこにいくの?」 「俺に出来ることをやるよ。 太郎に経験させたい。」  車はしばらく走って海沿いのモーテルに入った。車ごと入れるプライバシーの守れるホテルだった。本当は制服では不味いだろう。  車のスペースに入るとドアに直結している。 ドアの向こうは一面海が見えるガラス張りで 外のテラスからプライベートプールとつながって見える。 「わあ、すごい!」  太郎は走ってガラス張りの窓に張り付いた。

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