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第104話 吉田の情報

 内々に吉田が会いに来た。奥の事務所で話を聞く。 「5年前の事だ。赤ん坊の里子の斡旋をする組織が話題になった。  ドリームって覚えてるか?」 「ああ、確か育てられない赤ちゃんを、お腹にいるうちから契約して生まれたら里親に渡す、仲介をしていたんだろう。」 「それが・・今、現在,消息を追えない赤ちゃんが150人くらいいるんだ。  正確には147人。今、元気ならみんな5才くらいだ。」 「全くわからないのか?」  その当時の政治家が力を入れて、不幸な赤ちゃんを無くすっていう組織を作ったんだよ。  組織は民間団体の形を取っていた。政府は関係ない。その頃、若い女の子が妊娠して誰にも知られずに出産して殺してしまう事件が相次いだ。  ニュースにもなって世間に知られることになった。  そんな事を防止するために生んですぐに里子に出すシステムを作った。  一見、素晴らしい事に思えたが、生まれた子のその後が消えてしまっている。  センシティブな問題だから、生んだ母親も隠されて公表されない。大抵が未婚の未成年だったからプライバシーは固く守られた。 吉田が言う。 「政府は、里親は国内に限定したにも関わらず、大半が出国していることがわかった。  一部の出国の記録は残っている。一部だけだ。 その頃、不正にC国に多くの赤ちゃんが入っていたことが分かった。ほとんどは出生届も出されず里親の情報も無い。」  一時、ドリーム事件としてマスコミが騒いだが 当時の政治家が、 「事件は無かった。出生の数字はミスで多く発表されたが、そんな人数はいなかった。  147人の赤ちゃん,と言うのは単なる統計ミス、記載ミスだった。出産の記録もない。」  と発表されたという。 「お上のやり口だな。 俺も覚えてるよ、ドリーム事件。 生まれても虐待するくらいなら、里親斡旋はいい事だと思ってた。」  苦い顔をして陸は言った。里子に出されたら幸せになったかもしれないハナの人生を思った。 「別のデータがあるんだ。 C国の臓器移植が劇的に増えている。 きちんとデータを公表するわけもないが、その頃 移植を待っている子供が世界中からC国に大挙して押し寄せたんだよ。  日本国内では臓器移植の出来る子供には年齢制限がある。赤ちゃんは無理なんだ。大きくなるまで亡くなるのを待つ、なんて辛すぎる。そして順番は遅くなる。提供数が少ないから、大勢待っている。気の遠くなるような待ち時間。  そこに、金さえ積めばC国なら数週間かからずに臓器が手に入るって⁈  おかしいだろ、そんなこと。」 吉田は辛そうに言った。陸の生い立ちを知っている。

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