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第107話 檻
秘密クラブがある。非合法のクラブ。
誘拐してきた子供をしばらく閉じ込めて、抵抗する気持ちを無くすための訓練をする。
子供は生ものだから、手間がかかる。
「時間をかけている余裕はない。
早く出荷しなければ。」
タワマンの最上階にはオークション場があった。下の階には窓の無い防音のしっかりした箱のような部屋があった。檻のような。
違うのは一人ずつ、完全に隔離されている事だった。
檻の中には、泣き疲れて腫れ上がった顔の子供がいた。学校から帰る時、いきなり車に連れ込まれた。
泣いて暴れても男に殴られるだけだった。
薄暗い檻の中には小さなトイレがあった。ただ、それだけ。
喉が渇いて便器の水を手で掬って飲んだ。食事を持ってくる女の人が、それを見つけてペットボトルの水をくれた。
話しかけても通じない。日本語がわからないようだった。
いつも同じ食事。不味いパンと牛乳。
寂しくて怖くて泣いて泣いて泣いた。朝も夜もわからなくなった。陽の入らない暗い部屋。
布団もベッドもない。硬い床で膝を抱えて眠った。
「おかあさん、ここはどこ?助けて。」
この子はまだマシな方だった。
出荷される子供は船で運ばれる。魚臭い漁船の魚倉の中だ。船酔いして,もう何も吐くものがない。空っぽの胃袋を抱えて本土に到着するのだ。
すぐに臓器を取り出すため、何も与えられない絶食状態だ。過酷な移動で死ぬ者も多い。
死んだら、死にたての新鮮な臓器を急いで運ぶ。その非情さが、C国人のやり方だった。
タワマンの中では
「おい、仕事だぞ。風呂に入って着替えをしろ。」
攫われてきてから何日経っただろう。ある日、男が檻を開けて子供を連れ出した。
「どこに行くの?ここはどこ?」
引っ叩かれた。
「うるせえな、何も聞くなよ。答えは無しだ。」
風呂でゴシゴシ洗われて、少し広くて綺麗な部屋に入れられた。他にも二人、子供がいた。
「ここはどこ?知ってる?」
「シーッ、おしゃべりしたら殴られるよ。」
小さい声で話した。
「オレ、小3。やまねけんと。おまえは?」
「ぼく、たかなしはるき。8才。」
「俺ははやしこうた、9才。」
3人同時にしゃべった。
「なんでここにいるの?」
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