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第114話 吉田の出番
またまた吉田の出番だ。本来探偵なんだから探るのは得意だろう。
「キャバクラの特定からだな。保母さんが何か見てるかもしれない。小学校に聞き込みに行ってみよう。」
山根の嫁は可愛い女だったが、生活に疲れてやつれていた。
「健斗は、どこにいるのか知ってるの?」
「いや,全く足取りが掴めません。
学校に行ってみたいので、一緒にお願いします。」
渋々小学校に同行してくれた。前に捜索願が出されて、無事に帰って来た子がいる小学校だった。誘拐しやすい立地にある学校だった。吉田が覚えていた。
「田中誠也くん、何か覚えている事を教えてほしいんだ。山根健斗くん、知ってるかい?」
「あの時のおじさんに、何も言わないって約束したんだ。言ったら殺されるぞ、って。」
(陸から厳しく言われて解放されたんだったな。
子供は純粋だ。約束を守る。)
しかし、接点がこの子しかない。吉田は焦った。
「いや、もしかしたら陸はわかるんじゃないか?」
他の子供たちにも、親立ち会いのもと、少し話を聞いた。みんな共通して、車に無理やり連れ込まれそうになって逃げたそうだ。
犯人のおばさんがC国語を叫んでいたという。
「太郎の時と同じだ。懲りない奴らだ。
日本の刑が軽すぎるんだ。」
事務所に戻って陸を呼んだ。
「探偵の事務所は貧乏臭いな。」
「うるせえよ。良心的な値段で調査してんだよ。」
くたびれたソファに座って
「おまえ、何か知ってるんだろう?
堂島孝平の事だよ。」
「ああ、伯父貴はもう噛んでねえよ。多分。
破門になったから。
あの時、田中誠也を助けた。伯父貴の家の座敷牢に監禁されてたんだ。あの家はもう無いよ。
解体された。」
「あの出入り事件の前のことを知りたい。
堂島孝平の自宅以外にもアジトがあったはずだ。
客を取る部屋とか。」
「ああ、確かに!
C国の持ち物のタワマンがある
な。都心の一等地だ。あそこがアジトだ。タワマンなら部屋数も多い、改装もできる。
でも、奴らセキュリティがキツいぞ。
よそ者は近づかせない。」
あの名簿に載っていた人間が出入りするのを見張る。記憶にあるすべての名前を書き出した。
見張りは交代で24時間、ぶっ通しでやる。
ヤンキーたちと倭塾の塾生に頼むことになった。
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