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第115話 李星輝
港の李星輝から連絡があった。
コンテナに不審な死体が見つかった、という。
「ガキの死体なんだけど臓器が抜かれてるようなんだ。この前、陸が言ってた話かもしれない。
警察に通報したから、もう見られないと思って動画を撮ったよ。見に来い。」
陸は若いもんを数人連れて港に行った。倭塾のタケルも一緒だ。
港をまとめている老華僑の梁宋に挨拶に行く。
李星輝の片腕、呉白日が案内してくれた。
「ひでぇもんだぜ。みんな5才くらいなんだ。
コンテナの中で死んでる。
多分、コンテナに入った時は生きてたんだろう。それでも、臓器を抜かれて半死半生の状態で放り込まれたようだ。
日本に着く頃には腐敗が進んで性別もわからないほどだった。人間の尊厳を踏み躙っている。
問題は彼らの身元だった。
警察も頭を悩ませた。
「多分、C国人の子供だろう。」
という事で幕引きを図ろうとしている。
C国では子供を檻に入れて、売りに来る動画がSNSでバズっている。いらない子供は売り飛ばすのか?
「梁大人、ご連絡ありがとうございます。
俺のシマウチでも行方不明の子供が、多いんです。こちらは臓器売買というよりも、児童ポルノに関わる誘拐ではないか、と考えている所です。
あと、合成麻薬の件、水際で止めてくださり感謝しております。」
「ああ、あれはそのまま,メキシコに送ったよ。
ここで開けないで、勝手に,ね。
前駆物質だから麻薬の密輸には当たらない,という政府の見解だった。
非常に不本意だった。お宅の組も、麻薬は御法度だと聞いている。
登龍会には藤尾さんが付いていると聞いて安心しておる。一つだけ懸念がある。
ドリーム事件だ。その件に手を出すと消される。陸くん、気をつけてください。」
陸は緊張した。珍しい事だ。
李の家で
「いやあ、梁大人の気、には圧倒される。
タケル、どうだった?」
「ええ、何か常人とは違うオーラが見えました。
ああいう人が仙人になるのでしょう。」
李星輝と呉白日に歓待されて、少し和んだ。
あのおぞましい動画を見た後だけに。
「警察は握り潰すんだろうか?」
「流石にそれはないでしょう。」
おびただしい数の、ドロドロに溶けてウジが沸いた子供の死体だった。
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