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第116話 オークション

 あのタワマンで不定期だが子供の競りが行われる。顧客は、これは上級国民に許された快楽だ、と言っている。誰も許してはいない。  最上階の見晴らしのいい会場で、高級な家具に沈みながら、高級なシャンパンを楽しむ、人間性が高級ではない客たち。  真ん中の広いスペースに檻に入った、首輪をつけられた子供たち。8才から9才くらいだ。  なぜか、男の子が多い。少年のニーズが多い。 あの岩橋剛助もいる。醜く太った身体で座って、子供たちを吟味している。 「私はあの子がいいな。」 指さす方に山根健斗がいた。キャバ嬢の母親に似て可愛らしい顔をしている。 「ハイハイ、ただいま3番のけんと、が指名されました。」  けんと、と書かれた名札を付けられた子供が檻から引き出された。鎖が巻かれている。 「ハイハイ、500万から。 上ないか?500、500。」 「510万!」  岩橋が渋々値段を吊り上げた。 (高過ぎだろ、まったく。) 「ハイハイ、510、上ないか、上ないか?」 「520万!」 誰かが声を上げた。 「ハイハイ、520万出ました。 上ないか、上ないか?」 「550万!」  岩橋が声を上げた。 「ハイハイ、550万!上ないか?」  背の高いサングラスのイケメンが声を上げた。 「600万!」 「ハイハイ600万、出ました! 上ないか?どうでしょう?」  岩橋はこの可愛らしい少年をいじめたくて仕方ない。 「610万!」 「650万!」  岩橋の声に被せるようにまた、吊り上がった。 (もうダメだ。そんなに出せない。) 「ハイハイ、650万で落ちました。 ハンマープライス、650万。」  ハンマーが机を打つ音がした。 (クソッ、C国へ行けば、この十分の一で済んだのに。)  あのテレビによく出ているコメンテーターも高い、と文句を言っている。 「フィリピンに行けば、安くてなんでもやらせてくれる子供が買えるよ。  日本で気軽に遊べると思ったのに。」  ドカドカと警察官がなだれこんできた。 あのサングラスのイケメンは陸だった。その場にいた客は全員逮捕された。  オークション主催者はいち早く察知して逃げ出した。あの誘拐ババァも逮捕された。  が、元締めは一足違いで逃走した。 「C国人のボスを捕まえないと。」 「いや、見逃してやれ、と言われている。」 「えっ?」

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