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第120話 家出人捜索願い
陸は、保護した子供の身元を探していた。
学校の帰りに拉致された訳ではないらしい。
山根健斗はキャバクラの託児室から、迎えのふりをした女に連れ去られた。
あとの二人も別々の託児室から、だった。
キャバクラを辿る。
「またかよ。キラちゃんはいつも酔っ払って
子供忘れて帰っちゃうんだよ。」
キラと呼ばれたキャバ嬢は、アル中でいつも酔っ払っていた。この場末のキャバクラで子供を預けて働いていた。
「キラちゃんはすぐ客と枕やるから、子供置いてっちゃうんだ。いつも、私たちが面倒見てる。
この前は、目を離した隙にいなくなってた。
一人で帰ったのかと思ったんだ。前にもあったから、そう言う事。」
こんな小さい子を誰も気にかけない。
年間千人を超える子どもの失踪も妙に納得出来た。女一人で子育てするのは生やさしい事ではないだろう。陸のようなネグレクトの子供は意外と多い。
キラの子供だとわかったのは林康太と名乗った子供だった。もう一人の高梨春樹という子は、親を見つけるのに苦労した。
陸の手に余る。吉田の手を借りても、中々難しかった。忙しい陸には無理があった。
「見つかったよ、高梨くんの親。」
C国人の女に売ったと自白した奴がいた。
食い詰めもんのヤンキー兄ちゃんだった。
「女がいらねえって言うからよ。」
欲しがってるおばさんに売ったという。籍も入ってなかった。出生届なんか出してない。
「マッチングサイトで子供あげます、で検索すると変態から山ほど引きがあるのよ。」
一発殴り飛ばした。
「何すんだよ!
俺の子だ。何してもいいだろ。
また、作ればいいんだよ。」
「女は何て言ってる?」
「ああ、いらね、って。」
もう一発殴った。
「舐めんな、溶かして埋めるぞ。」
「お巡りさーん、人殺しがいますよぉ〜。」
警察署の中だった。
見て見ぬふりをしていた刑事が
「それでも親元に帰さなくては。」
「このままじゃ虐待で殺されますよ。」
それは児相の仕事だという。
「保護者を探して頂いて感謝します。
後で感謝状が授与されますから。
こちらは児童相談所と繋げますんで。
ありがとうございました。」
「児童売買のマッチングサイトを摘発してください。急いでお願いしたい。」
そう言って帰るのが精一杯だった。
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