遅ればせながら視聴率を稼げるニュースは、オールドメディアにも拡散された。　 　次々に暴露される動画。外務大臣岩橋だけでなく、財務大臣竹迫、元Ｏ知事橋呉。ヤジで妨害するのが得意な国会議員の水垂。局アナ大肥太。コメンテーターの玉梨、等々見るも無惨な動画が流出した。 　テレビではすぐに放送事故としてピー音と共に画面が暗転した。すかさず見ていた視聴者からネットに上げられた。迅速な動き。 「なんだ、これ犯罪じゃないか⁈」 　警察も動いた。もう上層部で揉み消せる範疇を超えた。報道機関は沈黙した。 「何が、ジャーナリズムだ！何が報道の自由だ？ 真実を隠蔽するなら報道とは言えない。」 　オールドメディアが児童ポルノで顧客になった政治家や有識者を叩いている陰で、重要な事件がもみ消された。 　5年前の、政府が一部の政治家と癒着して、里子に出した赤ん坊の事だった。 　ドリーム事件。最重要機密だった。 臓器移植を待つ患者は多い。気の遠くなるような長い待ち時間。金さえ出せば優先順位を上げてくれる、と国家主席が臓器の値段を公表したのだ。 　Ｃ国のやり方か？ 　あってはならない事だった。 ここ数年失踪する子供が増えている。 自ら失踪などできない小さな子供が拐われている。警察では手に負えない問題なのか？ 　一人の極道が気付いたって何も出来ない。 陸は絶望した。 （あのコンテナの動画をネットに流すか？） 　あまりにもセンシティブな動画で、見た人のトラウマになりそうだった。 　あの藤尾さんに相談する事にした。滅多に会えない雲の上の存在。 　それでも、国際問題だと言うからには、藤尾さんクラスの人でなければ手も足も出ないだろう。 　藤尾さんは至って気さくな人だ。 行きつけのバーで会う事になった。 　下駄履きで普段着で飄々と現れた。 「安藤陸です。お忙しい所を申し訳ありません。」 　藤尾さんは身軽な恰好だが、そばにピタリと寄り添っているのは有名なボディガードの元傭兵、深谷名都だった。藤尾さんの嫁でもある。 　全く隙のない名都に陸は気圧されていた。 持参したタブレットで動画を見てもらう。 「ひでぇな。どこの最前線だよ。」