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第129話 上級国民って?
一度メディアに流れた情報は,デジタルタトゥーとなって世界を駆け巡る。
政治家の醜いスキャンダルは、視聴者の大好物だ。犯罪なのに。
もちろん政治家生命は断たれた。刑事訴追の対象となり逮捕状が出る。今まで偉そうにオールドメディアで発言していたから国民の不快感は尋常では無かった。
仕掛けた秋吉はどこにいるのだろう。
秋吉は懲りない。
「あのタワーマンションは残念でしたね。
また、働いて頂きますよ。」
あの今関里菜に言っている。まるでしぶとく生きる女。陸の母親だ。
アジトにしている秋吉の住む低層マンションは、高級感そのままにまだ使われていた。
過去に零士が利用していたこともある。あの頃の零士は、暗い目をして、その美貌が一層際立っていた。
精神を秋吉に翻弄され,生きる屍のようだった。その投げやりな瞳が零士の美貌を際立たせた。秋吉は零士を売ろうとして何回か失敗している。
零士の中に秋吉に対する強い嫌悪感があった。精神分析療法と称してさまざまな怪しい薬物を使っても、零士を操れなかった。
心の芯に零士の抵抗があった。催眠術にかからない患者のように。
主治医に対する嫌悪感。呪いから抜け出せなかった。
草太に出会って、勝手に活動するようになった。
「一緒に来いよ。」
あの日、自転車置き場で腕を掴んで連れ出した草太。
零士が自分の意思で誘った男だった。
あの秋吉のマンション。至る所にカメラが仕掛けてある。
零士の絡む動画は、高く売れるのだった。
その着用した衣類も買いたい顧客が多かった。
全てが商品になる男。特に下着が高く売れる。
「秋吉に覗かれるのはもう嫌だ。」
無理に草太のアパートへ行った事もある。
ささやかに一生懸命生きている草太に惹かれて行く零士。
そんな経緯があった。秋吉は綺麗な男が好きだ。そして上級国民と称する人間たちを操るのが得意だ。
彼に操られて人生を棒に振る人間が後を絶たない。
そしてなぜかC国の太いパイプを持っている。
「あなた、医者でしたね。
そう、外科ではないの。残念だ。
子供はいつも供給不足ね。
何かいい方法はないか?」
それで考えられたのがドリーム事件だった。
悩み相談の窓口に来る女子高生。予期せぬ妊娠。その解決方法に気付いたのだ。
助手は、ム所で知り合った奴が紹介した女、今関里菜。
「何でもやるよ。金になるなら。
赤ん坊なんか扱うのは簡単だよ。」
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