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第134話 アフター

 健一のおすすめのカクテルを飲んでほろ酔いのすずが催促している。 「あなた、何時まで?」 「え、と。」  蓮が助け舟だ。 「ボーイは12時までだろ。」 あとはホストがボーイの仕事をやる。 「じゃあ、待ってるから用意して来なさいよ。」  左千夫は困って健一に助けを求めた。 「どこに行けばいいんだ?」 「あかんたれやなぁ。ホテルに行けよ。」 「どこの?」 「予約して置いてやるよ。」  名刺を投げてよこした。 「おまえ、まさかチェリーボーイじゃないやろなぁ。」 「経験はあるよ。少ないけど。」  笑って背中をどつかれた。  タクシーに乗って運転手に名刺を渡した。 「ここに行ってくれ。」 「あら、左千夫慣れてるの?」  すずが手を握って来た。    左千夫は全く慣れてはいない。むしろ今時の女子大生の方が詳しいだろう。  ワンパターンの前戯とセックスで散々な夜だった。終始不満そうなすずの顔が怖かった。 (早く帰りたい。子供たちとトランプでもやってた方が楽しいよ。これは仕事なのか?) 「へたくそね。全然イケなかった。やっぱり、陸みたいな遊び人に抱かれたいわ。」 「すいません。」 「あなた、経験あったんでしょ? 前の女の人はどうだった?」 「どうって?」 「その人、ちゃんとオルガスムスに達した? 感じてたの?どんな風にやったの?  言ってみてよ。」 「そんな、覚えてないですよ。」 「彼女をイカせたのか?って聞いてるの。」 「わからないです。」 「気持ちいいって言ってた?」 「普通、女の人から気持ちいいなんて言わないでしょ?」 「えーっ?言わないの?イクイクって言ってなかった?」 「はあ、まあ。」 「それ、気持ちよくなかったのよ。 可哀想な彼女。」  左千夫は屈辱に耐えた。

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