137 / 198

第137話 左千夫とアレックス

 どんな気まぐれか?アレックスが左千夫を構っている。一緒に店の近くのGジムに通い始めた。  マンションの食堂にも顔を出して、筋肉のつくメニューを注文する。 「ササミとブロッコリーね。」  日頃から鍛えているウォーキングダンサーたちのメニューを知っているので,食堂のおばちゃんは喜んで協力してくれた。  アレックスはなぜか、左千夫の部屋に通って来て筋トレと食事に付き合ってくれる。 「左千夫、お給料もらったらもう少しカッコいいスーツ作ろうよ。僕が選んであげる。」  マンションの噂を陸が聞きつけた。 「なんだよ、アレックス、 左千夫みたいなのが好みか?」 「違いますよ。あまりにも垢抜けない男で、 僕が何とかしたくなったんだ。  見ていてくださいよ。見違えるようになるから。そうしたらホストに昇格してあげて。  きっと指名が殺到するよ。 左千夫はお金がないんだ。 陸さん資金出してくださいよ。」 「ああ、そうか。店のためだな。」  金庫から一束札をくれた。帯封付きの束。 次の休みにスーツを仕立てに行った。 「なんかこの頃、左千夫がカッコよくなったって評判だよ。  食堂のおばちゃんも、ホスト仲間もみんな注目し始めた。 「アレックス、すごいな。」 左千夫も 「俺、筋トレ中、ずっと頭の中でロッキーのテーマがガンガン流れてた。」 「それですごいやる気満々だったんだな。」 「人生でこんなに頑張った事はないよ。」  三ヶ月で見違える体になった。 腹筋が割れてお客さんが触りにくる。注文の酒を運んでいても、席に呼ばれることが増えた。  陸が零士と相談して、左千夫はホストに格上げされた。  すずが久々に来店して驚いている。 「左千夫なの?ホントに? カッコよくなったね。髪切った?」 「ええ、全部アレックスのプロデュースです。」 「センスいいわ。 ヘアスタイルだけでこんなに変わるのね。  でもアレックスはセックスは教えてくれなかったでしょ?  私がコーチしてあげようか? セックスが上手じゃないと、男の魅力は半減しちゃうのよ。」  実は左千夫はゲイのアレックスに、充分教えを受けていた。左千夫はノンケだが、アレックスはベテランだった。

ともだちにシェアしよう!