吉田は，当時の医療関係者を探して、高瀬医師にたどり着いた。あの時ドリームに関わった病院はもう経営が変わっていた。 　延命会佐々木病院。ドリーム事件でマスコミに騒がれて関係者はほぼ全員が退職したらしい。 　当時の看護師も少ししか残ってはいないようだった。散々探して、当時を知る貴重な看護師から高瀬医師のことを聞いた。 「いい先生だったの。ずっと人気のギネの先生だったから，引き抜かれた時はみんながショックを受けてた。」 　産科のベテランで助産師を大切にする先生だったと言う。 「昔の産婆さんと言う存在を尊敬していて、助産師の権利を守ってくれた。 　私たちはみんな高瀬先生が大好きだったの。」 　驚くべき医者だった。現場で好かれている。 評判のいい医者だった。 　ドリームに引き抜かれた本人は、ある程度終わったら復帰するつもりだったようだ。 「ドリーム事件として問題になって一番驚いていたのは高瀬先生だと思う。」 　事情聴取から解放されたあと、佐々木病院を追われてしまった。 　惜しむ声が多かったが、院長がトカゲの尻尾切りのように高瀬医師を処分したらしい。 　数人の医者を処分して幕引きを図ったようだ 「もう，俺は人の誕生に関わる事はやめるよ。」 　そう言って終末医療にシフトしたと言う。 「お年寄りを看取る事が僕の使命だ。 人は生まれて、必ず死ぬ。 でも人生は尊いんだよ。それに関わる事は神聖なんだ。心を込めて診察するよ。」 　時にはその苦しみを一緒に乗り越える、そんな努力をする先生だった。 「ふうっ、疲れたなぁ。 高瀬医師本人には会えなかった。また、日を改めて探してみるよ。 　Ｏ区の医師会に当たってみるつもりだ。」 陸の事務所でそんな話をした。 「大分、近ずいて来たんじゃないか、真相に。 医師の名前がわかったんだ。なんだか闇が深いな。」 「里子の人数を書き換えられてる。 減ってるんだ。消えた赤ちゃんはどこに行ったのか？」 　陸はあのコンテナの動画を思い出した。動画は吉田にも見せている。 「情報が漏れている。誰かが、リークしてるんだ。あのオークション場を開催している奴を捕まえれば。」 「Ｃ国人だけじゃないな。 日本の事に詳しい奴がいる。 法の目をくぐれる頭のいい奴。誰だろう？」